手に入らないならイラナイ。

                                手に入らないから欲シクテ、

                       手に入ってしまえば終ワッテシマイソウデ、

                                            だから

                             アナタのモノになんかナラナイ。


Can't take my eyes off you


「大晦日に108つの煩悩を鐘を鳴らして祓い落とすって。」

白い息を吐きながら空を見上げて、誰に言うわけでもなく呟く。
降り積もった雪遊びに夢中の友人達を眺め、
誰も聞いて無いし応えなんか期待してなかったからそのまま続ける

「108つぐらいの煩悩祓ったところで変わんないっての。」

欲望は果ても底も知ることなく。ヒトが生きていく以上満たされる事はない。

手を伸ばせば届くところにいるのに、自分のものになることは無い。
どんなに望んでも。

(−悔しいから絶対言わないけど。)

「108つ祓った後に残ってる煩悩って何?」
「さぁ?・・・・叶わなかった願いとか?」
「叶ってたら祓ったってことになるの?」
「何か違うな・・・。ヒトって願いが叶ったら叶ったで『もっと』って思うじゃない?
 だからキリがないって話。」
「ムツカシイねー」
「そうねー」

うろ覚えのどうでもいい話。
誰も聞いて無いと思ってたのに、後ろから話しかけられて、振り返ることもなく続けた。
見上げた夜空から緩やかに降りてくる雪を見ながら吐き出した吐息は白く闇夜に消える。
日付の変わる瞬間を皆で迎える為に外に出たはいいが、あまりの寒さに顔をしかめる。

「寒いなら中に入る?」
「イ・ヤ。」

言いながら風除け代わりに自分より一回り大きな背中に隠れたが、
すぐに風向きが変わり、風よけの意味がなくなって巻いていたマフラーに顔を埋める。
頭上から面白がっているとしか思えない笑い声を聞きつつ、
更に暖をとるべく長兄お手製のウサ耳付の帽子をかぶる。

「暖めてあげようか?」

笑いながらコートの前を広げ抱きついて来いとばかりに両手を差し出す姿に
(―変質者ポーズだ。)
と思ったことは、黙っておこうと思った。

冗談半分。
本気で抱きついても、きっと少しは驚いたとしてもそんなに驚かせる事もできないだろうと思うと
・・・・何かひどく癪に障る。

無言で距離を縮め、抱きつく。

思ったとおり、一瞬だけ驚いて、笑いながら抱きしめてくれた。

「人の事言えないじゃない。ばかっぷるー」

否、カップルつなぎのままコートのポケットに手突っこんでるアナタ方に言われたくない。
呆れながら発せられた友人の言葉を肩越しに聞きつつ、


―服の中に手を滑り込ませた。


「〜〜〜〜!!!!」

声にならない叫びを耳元で聞きつつ、すっかり冷え切って感覚も無くなりかけていた指先を
見た目から無駄に体温の高そうなヨザックの肌で直に暖める。

「〜〜!!ちょっ冷たい!!ぎゃぁぁ!!セクハラ!!」
「人肌って温いよねー。」

慌てて離れる姿にいい笑顔で答える。

「ひどい!!グリ江のカラダが目当てだったのね!!」
「何を今更。」
「即答?!」
「あーいいな。ボクもー♪」
「猊下ー?!!ぎゃぁぁ!!雪っ?!雪は反則!!」
「いいなーあたしも暖とりたーい」
「ヨザックでなくても俺があっためてあげますよ?」
「うんvソレは、いらない」
「Σ?!」

左腕の時計に目をやり友人達の無邪気な笑い声に微笑みつつ叫ぶ

「1分前ー!!」
「もうそんな時間かよ!?」
「今年も色々あったねぇ」
「わくわくするねユーリ!」
「グレタと初めて迎える新年だもんな♪」

ほほえましい親子の会話に自然と顔は緩むが、すぐに風の冷たさに顔をしかめる
1年・・・。1分を切った今、全てを思い出すのは無理だと諦めた。

「あ゛ー寒い!!チクショウ!!イイオンナになるぞー!!」
「何だよいきなり?!」
「あはは♪じゃあたしもー!幸せになるぞー!!」
をGetするぞー!」
「ドサクサに紛れて何を仰っているんですか猊下。」
「心が狭い腹黒紳士にはならないぞー!!」
「えっとねえっとー、グレタは毒女になる!!」
「ソレだけはヤメテクダサイ。」
「ユーリと正式に結婚するぞ!!」
「おめでとうヴォルフラム♪」
「面白がるな!!」
「わはは、じゃ陛下は?」
「Σ俺?!え、っと俺は・・・」
「グリ江はお嫁さんになるー!!」
「Σ聞けよ!!」

笑いながら見上げれば2階の部屋の中から、アニシナとグェンダルが珍しく口元に笑みを浮かべ
仲良く並んでこちらを見ていた。手を振るとにこやかに振り返してくれた。
ああ、やはりあちら側にいるべきだったか。

「カウントダウンいくぞーっ!!」
「「「おーっ!!」」」

陛下と猊下が拳を高く振り上げ夜空に向かって叫ぶ

「3! 2!」

否、ソレ「ハッスル」だから。番組違うから。負けたから。

残り1秒。

視界に広がったのは、オレンジと青。

「1!!!」

時間が止まった気がした。

「A HAPPY NEW YEAR!!!」
「おめでとうー!!」
「ことよろー!!」

口々に新年を祝う祝詞が飛び交う。

時間にして2秒強。

行く年最後の瞬間と来る年最初の瞬間が同じだなんて。

してやったりといった隣に、周りにばれないように蹴りを入れつつ

今年こそはと、心に誓った。


全てがホシイだなんて、

なんて傲慢な願い。


―寒いと叫びたくなります。仕方ないんです。3年間の習性は早々なくなるもんではないのです。
 最初は違う話にするつもりだったんですが、いつの間に(驚愕)


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