禁断の果実
すべてが愛しいから欲する。
すべて手に入れたくて、自分のものにしたくて。
手に入れたら衝動がおさまるかと言ったら、ますます欲しくなる。
それは禁断の果実。
「ん……っ」
繰り返される口付けに溺れそうになる。
どうしてコンラッドはこう甘いキスをするんだろう。
何も考えられなくなってしまうくらい。
「…だめ……!」
先に進もうとする手を弱々しく止める。
本当はもっと強気で止めたいけれど力が入らない。
「コンッ……!」
止まらない行為。
このまま続けられたらどんなに楽か。
嫌じゃないのに拒む、それには理由があった。
「だめ!」
唇が離れた隙に声を出した。
思ったより大声が出たのには自分が一番驚いたのかもしれない。
さすがのコンラッドも手が止まる。
「どうして?」
「えっと……そのっ…」
口篭るのはいくら恋人でも伝えるには恥ずかしいから。
「うん?」
優しく訊ねながらも彼の腕はしっかり体を抱きしめ、顔へのキスを止めない。
隙あらばコトを進めよう感がありまくりだ。
また流されそうになる。それを断ち切るには伝えるしかない。
「っ!……アノ日なの…!」
「なんの日……ああ」
一瞬で理解した彼に安堵した。そしてそれはすぐ驚きに変わる。
「ちょっと!」
「もう黙って」
大きく開けた口を塞ぐ。
舌が絡め取られた。でも今度は流されない。
「いたっ!」
侵入した舌に噛みついてやると整った顔が歪められる。近かった顔が離れた。
「なにをするんですか」
「なにを?なにをって言った!?」
話を聞いて理解してくれたと思ったのに。噛み付いてやったのに性懲りもなくまたキスしようとする。
その顔を両手で押しやる。
「わかってんの?」
「なにがです?」
不満気な顔。どうして拒まれたのか本当にわかってないの?
「あたし、だめって言ってるんだけど?」
「そうなんですか?」
裾から入った手が太股を撫でる。
「気にならなくしてあげますよ?」
耳元で囁いた言葉はあたしを怒らせるのに十分だった。
「バカ!!!変態!!!」
精一杯の力で胸を押す。
「?」
「信じられない…!コンラッドなんか……大っ嫌い!!!!!」
「!!!」
振り返りもせずその場を飛び出した。
***
「…なにソレ」
「姫だよ?の親友だろ」
「それはわかってるけどなんでヨザックがだっこしてるわけ?」
子供のように抱き上げられたはヨザックの首にしがみつき顔を伏せている。
「そこんとこでうずくまってたから連れてきた」
そう言いながら背中を撫でている。
「…泣いてる?」
「…おもいっきり」
「そういった役目はウェラー卿でしょ。預けてきたら?」
「…やだ!」
涙声で拒否しながらヨザックの首に回した腕に力を込めた。
「ぐえっ…!姫…く…くるし……」
「コンラッドは嫌!!」
「わかった、連れてかないからヨザックを離してあげて。…じゃないとヨザック落ちるよ」
「た、助かった…」
ソファに座り、隣にが腰を下ろす。ヨザックが淹れてくれたミルクティーの甘い匂いが漂った。
「グリ江の紅茶よ。落ち着くから飲んでごらん。はこっち」
「ありがとう」
あたし好みの甘さ。ヨザックに仕込んどいてくれてありがとね、。
「…で?」
に促される。あたしは所々詰まりながらさっきまでの出来事を話した。
話し終わってミルクティーに口を付けるとそれは既に冷たくなっていた。
ため息をついて二人を見ればヨザックは呆れたような怒ったような申し訳ないような複雑な顔で、
は………とにかく恐い。目が据わってて、でも口元には薄ら笑いを浮かべている。
こ、恐い!!
「なんって男なの…!!」
「本当に申し訳ない…」
「ヨザックが謝ることないよ。悪いのはあの変態なんだから」
「それでもごめん。……でも隊長の弁護するつもりないんだけどさ、あいつの気持ちもわかるんだよなあ」
ヨザックの言葉にと二人身を寄せ合った。
「待ってよお!そんな目で見ないでちょうだい」
「やっぱり変態の親友は変態だよ…!!別れた方がいいよ!!もう日本に還ろう!!!」
「姫!!だめだめ!!そんなの困るわ。グリ江の話も聞いてよ」
「やだよ!!」
「!この子どうにかして!」
それまで黙っていたが口を開いた。
「ヨザックの話を聞いてから今後のこと考えよう。もし変態なら一緒に還るから。ね?」
「…がそう言うなら……」
なんだか責任重大になったヨザックの弁護。
これで二人の姫を納得させられなかったら恋人(の筈)のとはお終いで、
姫君たちがあちらに還ってしまえば坊ちゃん始め他の面々になんと言われるか。
どうやって還るのかとも思うが。
「愛されてるんですよ」
「「はあ?」」
ヨザックの言葉にと二人眉を寄せた。
「男って止めきれないこともあるんです。俺がたまにそうだからわかります」
「そうなの?」
に確認を求めれば横目で睨まれた。
「そんなのどうでもいいから続き」
「はいはい。えーと、余裕なくなるくらい姫が好きなんですよ。
いつも冷静なあいつがですよ?自分が暴走するのを抑えれなくなるのはいつも姫に限ってなんですよ?」
「でも無理矢理なんだよ!?」
「それはあいつが悪い。でもきっと一番落ち込んでるのはあいつです」
そう言われれば少し怒りもおさまるけど……でも。
が心を読んだかのように代弁する。
「そんなのずるいじゃないの。お前が好きだから仕方ないだろう。少しは我慢しろ。ってこと?
好きならこっちのことも考えろっつうの」
「そうなんだけどさ、理性が飛ぶとなあ…」
「それで女の子傷つけて楽しいわけ?気持ちのないえっちしてそれで満足なわけ?」
「…すんません」
かっこいい!!そうだよそうだよね。あたしのこと好きなら我慢も覚えろっての。
「でもなあ誤解するなよ。俺はちゃんとのこと考えてだな」
「あたしたちのことじゃないでしょ!」
「いーや、はっきりしとかないとお前は根に持つから」
「なんですって?」
ど、どうしよう…喧嘩始めたよ。
言い合う二人におろおろしていると扉をノックして元凶が顔を出した。
「良かった、ここにいた……」
近付く前にベランダに飛び出した。ヨザックの話聞いて少しは落ち着いたけどまだ話したくない。
けれどベランダからは逃げ道がない。半泣きで下を覗き込めばちょうどムラケンとグウェンダルが歩いていた。
「ムラケン!グウェン!!」
顔を上げた二人の顔が焦りに変わる。
「わああ!パンツが見える!じゃない。危ない!!」
「よせ!!」
慌てて走り寄る二人。その時にはもう柵を乗り越えていた。
後ろからとヨザックとコンラッドの叫び声が聞こえた。
少しだけの浮遊感。気付けばグウェンの腕の中にいた。
「この馬鹿者!傷でもついたらどうする!!」
「だって…」
「な、泣くな…!」
「、大怪我でもしたらどうするんだい。二度とやっちゃだめだからね!」
困り顔のグウェンに怒った顔のムラケン。
「…で、なにがあったんだい?」
ムラケンが見上げた先、あたしが飛び降りたベランダには三人が青い顔で立っていた。
「!危ないでしょーが!バカ!!!」
「姫―!怪我は?大丈夫なの!?」
二人が口々に叫ぶ。コンラッドはただ黙っていた。そしてそのまましゃがみこんでしまう。
「なにしてるんですか」
低い声。思わず身を縮めた。
「こんな高さから落ちて、グウェンがいてくれたから良いものの怪我で済まなかったらどうするんですか!」
「…それは……悪かったけど…なんでコンラッドに怒られなきゃいけないのよ!!!」
「怒るのは当たり前でしょう!」
「自分が原因じゃないの!怒る資格ないよ!」
「ありますよ!」
「ない!」
「ある!」
「ないってば!」
「ある!」
周りはくだらない言い争いをただ眺めていた。
「それに早くグウェンから離れてください!」
「それもコンラッドには関係ない!」
「あります!」
「ないっていってるでしょうが!」
「あるんだ!」
なんて自分勝手。
「もう…ホントに大っ嫌い!!ほら行くよグウェン!」
命令されてグウェンはぎこちなく歩き出した。あたしをだっこしたまま。
ムラケンは二人を見送った後また三人を見上げた。
「なんだか複雑そうだけどのことは僕に任せていいよ」
黒い笑顔で去って行った。
は座り込んだままの彼の襟首を掴んで微笑んだ。
「さて変態サンの言い訳でも聞きましょうか?」
***
椅子に座るの前に正座をさせられているのは眞魔国で特に腕の立つ二人。
「そう。大体はヨザックの言ったとおりね」
「ねえ、それよりなんでグリ江まで正座なの?」
はそれを無視した。
「どうする?変態サン。あのままだと力技で還るよ」
「そんなことさせません」
「変態サンにそれ言う資格ないんだけどねえ」
「ちゃんと反省してます」
「後悔するなら最初からやるなっての。そうねぇ間に入って取り持ってやっても良いけど?」
顔は笑顔だが目は笑ってない。
裏は確実にある。あるが今はに頼らざるを得ない。
「お願いします……」
親友の土下座にヨザックは密かに涙した。
***
「どうしたら許すかって?無理無理そんなの」
猊下の部屋でくつろいでいた所へが訪ねてきた。どうやらコンラッドの肩を持つ気らしい。
「ウェラー卿もだいぶ反省してるよ」
「本人はなんで謝りに来ないのよ?」
の目が細められた。
「慣れない正座でヨザックと二人悶えてるわ。それよりこのままじゃ自分もきついでしょ。
本心からは嫌いになってないくせに」
「…そんなことないもん」
「じゃあさっさとケリつけたら?」
「ケリ?」
「別れておいでよ」
黙ってたムラケンがそう言ってあたしの手をとる。
「次の相手は僕でどう?」
「もう冗談ばっかり」
「ほら早く行こう。あたしの部屋にいるから」
「え???」
腕を引っ張られる。
別れる?コンラッドと?
「あんな変態さっさと振ってきなよ」
「そうそう」
「のことなんだと思ってるんだか。最低な男だよ」
「あら、猊下もそう思います?」
「本当にのことを想ってないよね」
「自分の所有物としか見てないのよね。口だけの最低男」
「勝手なこと言わないで!」
の手を振り払い立ち上がった。
「確かにコンラッドは変態だよ…いい年なのに我慢の出来ない最低男だよ!」
そうだよ、それなのにまだ好きなの。
「コンラッドのこと変態とか最低とかわかってるけど二人がそんなに言わないで!
コンラッドはちゃんとあたしのこと考えてくれてるもん!!あたしのこと……ちゃんと好きだもん!!」
シン…となった部屋。なんだか不安になってしまう。
「た、多分…」
この雰囲気に強調できないのが悔しい。
いきなりが笑い出した。ムラケンも続く。
なにがなんだかわからずぽかんとしていると扉を開けてこちらも笑っているヨザックと、
嬉しそうに微笑んだコンラッドが入ってきた。
「は、はめたねー!!!」
に食って掛かると涙を浮かべながら謝ってきた。
「素直に言えたじゃん」
「こんなのひどい!!」
「」
の胸元を掴むあたしの手をそっとはずして、握ったまま頭を下げた。
「すいませんでした。本当に反省してます」
「うっ……」
「何度でも謝ります。もうしないから許してください」
「…ホントに?」
「はい。が一番大事だから、もう傷つけたくない」
上げられた瞳は真剣で嘘を付いてるようには見えなかった。
「理性が飛んでしまうくらいが好きでたまらないことは覚えててもらえると嬉しいんですが」
「……わかった……覚えとく」
「良かった」
そのままコンラッドが抱きしめようとする。
「ストーップ!!」
「?」
彼女を見ればその目はコンラッドに向けられていた。
「契約違反よ」
「契約?」
はにっこりと笑って言った。
「取り持つかわりにサンが良いって言うまでスキンシップ禁止令を出したの。
あとは1週間あたしの下僕となること」
「そ、そんな条件呑んだの!?」
「が戻ってきてくれるならこのくらい呑みます」
でも顔は引き攣っていた。そりゃあそうだよね。の下僕なんて何させられるかわかんないもん。
「へえー、楽しそう。、僕も協力したしウェラー卿たまに貸して」
「もちろんかまわなくってよ、猊下もご苦労様」
哀れコンラッド。悪魔二人に散々いじめられるのが目に浮かびます。
「の方だけでも早く解いてほしいな」
「それはい・や」
「……拷問ですよ」
「1週間耐えてね」
にっこり笑ってやればへこむコンラッド。
楽しそうなと猊下よりが一番ひどいと思ったヨザックなのでした。
〜〜fin〜〜
〜彩乃様より有難いお言葉〜
そんないじめてないけど。むしろ序章??
ムダに長いけど当初と話変わっちゃったけど、今更書き直すのはもったいないから(笑)
ここから次男イジメが始まるといった感じですか。あとは遊葉さんにバトンタッチ!
〜yu-ha〜
管理人やっててよかった・・・・。
・・・・・・っ!!(声になりません)ああもうっ幸せ!!顔が緩むー!!
えー下僕?!何させる?!何させよう?!(爆笑)バトンいただきましたー(嬉)
オイシイ!美味しすぎるよ!!ビバ次男虐め!愛が試されてますよ?!
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