free time
夕食後はそれぞれが思い思いの場所で過ごす。
陛下とヴォルフ、グレタの親子は家族団欒をして、グウェンとギュンターは仕事の残りを片付ける、
それがいつもの過ごし方。
自分はといえば猊下がいる時はヨザックと三人で過ごすのが普通で、
どちらもいない時は本の虫になることが多かった。
と過ごすこともあるけれど彼女は大抵恋人であるウェラー卿といることが多い。
今日も食事が済むと二人で食堂を出て行った。まあまあ仲がよろしいこと。
「なにしてんのかなー?」
チェスの駒をお手玉にしながらひとつの疑問。
「そりゃ愚問ってもんだな」
「そうでした」
「認めたくないけどね」
ヨザックが鼻で笑い猊下が眉を顰めた。
「恋人同士がやることっていったらアレしかないでしょ。なに?がお望みならグリ江頑張るけど?」
「いいです」
「あら。残念」
そのまま沈黙が訪れる。きっと猊下の考えてることも一緒だと思うんだけど。
「猊下?」
「…君も好きだね」
「……人の恋路を邪魔すると馬に蹴られますよ」
ヨザックにもばれてたか。でもやめられないウェラー卿イジメ。甘い時間を邪魔するのって楽しいんだもの。
「じゃあ一人で行くわよ?」
「行かないとは言ってないよ」
「……二人が行くなら俺に拒否権はないんですけどね…」
ヨザックは渋々立ち上がった。
「で?どこにいるんだい?僕のは」
「んー。ウェラー卿の部屋じゃない?今日サンの部屋散らかってたし」
「最中だったらどうするんですか」
「鍵かけてるでしょ。見えないって。…生々しい声は聞こえるかもだけど」
複雑そうなヨザック。自分も友達のそんな声聞きたくないし!
三度ノックをしてしばらくしても返事がない。
「あれ?ハズレ?」
ノブに手をかけると回った。
「留守みたいだね。どこ捜す?」
「んー…」
「こらこらこら!不法侵入だって」
中に入ろうとしたところをヨザックに止められる。
「いないならそれでもいいさ。なんか弱味探そう!」
ヨザックの手を払い中へ進んだ。諦めたように二人ともついてくる。
中には明かりが灯されていて暖かい。さっきまでここにいたって感じなんだけど。
「あれ?これってサンの?………」
無造作に落ちていたソレはキャミソール。ちょっと可愛らしすぎるくらいだけど黒で総レース。
「ええ?の下着?」
「猊下、鼻息荒いわよ」
「仕方ないじゃないか。年頃の健全な高校生だからね。僕は」
でも目つきは親父。そこへ困惑したヨザックの声が響く。
「こ、これ…!俺とんでもないもの見つけた!」
「どれ?」
受け取ったソレは、パンツ。キャミソールとセットらしく同じく黒。こちらも総レース。
………サン。大人なんだね、君は。
「ウェラー卿め、許せん!一人で楽しんで」
「姫、こんなのするんだー」
「ホントびっくり」
三人で立ち尽くしていると部屋の中の扉が開いた。
「着替えって俺のでいいのか?」
「何でもいいよー」
髪から雫を落としながらシャツの前をはだけさせ、ウェラー卿が出てきた。どうやら入浴中だったらしい。
「……………」
「はい。着替え」
「……………」
例の大人下着を手渡すと漸く正気に戻ったらしい。
「どうしてここに?」
「細かいことは気にしなーい。ほれ早く着替え持っていった」
背中をぐいぐい押しやって浴室に戻す。
「違うっ!!これじゃないってば!」
「あ、そうだった」
「どうしたの?」
「いや、が」
声しか聞こえないけどが頼んだものはアレじゃなかったらしい。
「そこで待っていてくださいね。いろいろ聞きたいこともありますし」
そう言って大人下着を手渡された。……何故?
しばらくしてが現れた。
「おお!男のロマン。彼の大きいシャツを着て現れるなんて!!」
「下にきちんと穿いてます」
裾を捲って見せたのはハーフパンツ。
「ジャージかよ」
「なにしに来たの?ん?ムラケンもヨザックも」
笑顔が怖いのは気のせいじゃないよね。理由なんて聞かなくてもわかってるくせに言わせようとするなんて、怖い娘!!
「?怒らないから言ってごらん?」
小さい頃、その台詞で母親に何度怒られたか。そう言って怒るんだもん。言いたくないよ。
でも言わなければまたそれで怒るんだもんなー。
「あれ?姫。風呂に入ったんじゃないんですか?」
「入るわけないでしょ。人の部屋で」
そういえばは風呂上りとは言えない。髪も濡れてないし肌がピンク色なわけでもない。
「残念ながら入ったのは俺だけですよ」
「じゃあなんで着替え?」
「お茶をこぼしたのよ」
ええー!つまんない。
「なにがつまらないのかなー?」
「…なに?なんの魔術?心読む力があったなんて知らなかった!」
「そんな力がなくてもあからさまにつまらないって顔されればわかります…、なに持ってるの?」
「ああ、これ」
ウェラー卿に渡された下着、握ったままだった。
「あー、コンラッドどうしてやっちゃうの。ちゃんと包むつもりだったのに」
「ごめん。でももうが持ってたからいいかなって思ったんだ」
仕方ないなあと唇を尖らせる。が下着を取り、ヨザックの手に乗せる。そして満面の笑みでこう言った。
「大事に使ってね?」
「え!?えええ!?これ姫のじゃないの?」
「こんなの無理だよ。これはグリ江ちゃんに」
「なんで俺!?じゃなくて?」
「だってにあげてグリ江ちゃんにあげないのって不公平でしょ?」
確かに奴は女装してるけど、女物の下着まで着用するのか?
いや、かなり面白いけど彼氏がソレっていうのはどうだろう?
「キャミソールはまだ使えるけどパンツはちょっと…」
「ああ、お前穿かない主義だもんな」
「隊長!どうしてグリ江の秘密知ってるの!?」
「陛下が言ってた。まったく、陛下は純粋なんだからあんまりからかうなよ」
「僕も聞いた。本当なのかい?」
「さあ?知らない」
ウェラー卿がに近付きヨザックから引き離した。そして彼女を背に隠すとあたしたちに向き直る。
「さあさあ、もう出て行ってもらいましょうか」
「ウェラー卿。を独り占めかい?」
「そうしたくもなりますよ。見たでしょう?あの格好。可愛くて可愛くて誰にも見せたくない」
がウェラー卿の背中を叩いて抗議するが彼の後ろから出てこようとはしなかった。
多分真っ赤になってて、それにシャツ1枚の格好が恥ずかしくなったんだろう。
「じゃあ僕は寝ようかなー。おやすみー」
ひらひらと手を振って猊下が出て行く。
「じゃあ俺たちも帰りますか」
「そうね」
猊下の後に続きかけて振り返った。
「ウェラー卿?あんまり頑張り過ぎないようにね。サンもほどほどに」
「なんの話!?あたしだってもう帰るんだからっ!待って。一緒に帰るー!!」
「えっ?!?」
「ごめんコンラッド!洋服借りてくねっ」
ウェラー卿の鼻先で扉は無情にも閉じた。
「じゃっ!おやすみ!!」
は一人走りだす。その後ろ姿におやすみの挨拶をおくって、笑った。
「…どうしても隊長の幸せを邪魔したいのね」
「そういう星の元に生まれたウェラー卿が悪いのよ?」
こう思うように事が運ぶと楽しいわー。
「でもきっと…」
「ん?」
なにか言いかけて言葉を濁したヨザックが歩き出す。
「今日はのとこにお泊りしよーっと。着替えもあるしね!」
「着替えってソレ女物だし!誰も泊めるって言ってないし!」
小走りでヨザックを追いかけた。
〜〜fin〜〜
彩乃様より
この後、ヨザックは泊まっちゃうのですよ。報われるのですよ。
え?コンラッドは姫のお部屋に押しかけるに決まってます。そうなんです。先は裏になるので書きません。
遊葉
裏でも構いマセンのことよ?(良い笑顔)
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