コンラッドは腹黒でセクハラばっかりで、嫉妬深いし困ったとこが多いけど、
だけど甘えん坊で可愛いとこあるし………それに優しくてかっこよくて………



とっても大好きな人。



数日振りに眞魔国に戻ったあたしを迎えたのは今回は残っていたとヨザック。

――足りないとすぐ思った。

「コンラッドは?」

が視線を泳がせる。

「隊長なら坊っちゃんのトレーニングに付き合ってる」
「へ?」

あり得ないと思った。自惚れじゃなく、コンラッドがあたしより優先するものがないから。
ユーリの護衛ならともかくトレーニングくらいで出迎えに来ないなんて。

「コンラッド元気?」

そう二人に問いかけて振り返る。

「…なにやってんの?」
「たっ助けて…!」

ヨザックがの後ろから抱きついてじゃれているところだった。ヨザックがそういうことするの珍しい。

でもその姿、どこかで見覚えがある……………


ああ。

コンラッドじゃないか。


「じゃ」
「ちょっと?!」

背後から飛んでくる声を無視して部屋へ向かう。


ポタポタポタポタ。

歩く度自分から落ちる雫。スタツアしてこんな風にびしょ濡れのままひとりでいるなんてなかった。
いつもコンラッドがタオルを持ってて部屋にもついてきて。

「嫌だって言ってもそばにいたのに…」

だから、気になるんだと思う。こんな風にほったらかしにされたこと考えてみたらなかったから。

「お!?」

顔を上げるとジャージ姿のユーリと……コンラッド。やけにドキドキするのはどうしてだろう?

「今来たのか?知ってたら迎えに行ったのに」

なあ?と振り仰いだユーリにコンラッドは静かに首を振った。

「知ってましたけどとヨザックに頼んでいたので」
「は?知ってた?」

ユーリが怪訝な顔をした。

、風邪をひく前に着替えたほうがいいですよ」
「…うん」
「じゃあ陛下行きましょう」
「ええ!?おいコンラッド!は?」
「部屋はすぐそこだし大丈夫ですよね?それとも送ったほうが?」

無言で頭を振るとあたしを置いてコンラッドはユーリと行ってしまった。

「……嘘ぉ…」

コンラッドがあたしに構わないなんて。



なにか悪いもの食べたんじゃないの?本当におかしい!
コンラッドがきちんと仕事してる。スタツアした初日は絶対にそばから離れないのに。

それにムラケンと一緒にいても気にしてないみたいだし。
そりゃ優しいよ?……その他大勢と同じ様にだけど。

「ねぇ。なにかあったの?」
「…なにがー?」
「…お疲れね」

隣に座るはぐったりしてテーブルに突っ伏している。ヨザックが付きまとってセクハラ三昧らしい。

「ヨザックがうっとおしい…」
「仲良きことは良いことよ」
「人事だと思って」

睨むに笑って返す。

「ヨザックもコンラッドも変よね」
「別人のようだわ。ウェラー卿とはどうなの?」
「どうって…」

全然二人きりになってないけど。
声をかけてくることが滅多にないけど。
というか、あんまり顔見てないかも。

「嫌われたのかな?」
「はあ!?あのウェラー卿に限って!」

鼻で笑うの顔がこわばった。



現れたヨザックはあたしに目もくれずに近づいて抱きしめた。

「だからやめろって言ってんの!」
「なんで?」
「なんでって」
「好きだから一緒にいたいんだけど」


ぶっ!


お茶吹いちゃった。けどヨザック全く気にしてない。完全にしか見てない。

「そういうキャラじゃないでしょ!それはウェラー卿!」
「関係ないだろ?」

ヨザック男前ー!かっこいい!もなんだか諦めたような感じ。これはあたしがいたら邪魔ね。
こっそりその場を抜け出した。
なんとなくが羨ましいなんて思うあたり病んでるのかも。



行くところもなくてノーカンティに会いに厩舎に足を向けた。
バカだよね。ノーカンティはコンラッドの愛馬じゃん。

?」

こっそり去ろうとしたのにコンラッドに見つかってしまった。気まずい。

「久しぶりだね」

なんてノーカンティに話しかけてみたけど全神経はコンラッドを意識してる。

「だいぶ馬にも慣れたみたいですね?」
「うん。ノーカンティは怖くないよ」
「それは良かった」

愛馬の世話をしながらコンラッドが笑う。少しだけホッとした。

「コンラッド?」
「はい?」
「…元気だった?」
「ええ」


沈黙。


「あのさ」
「はい?」
「……あたしのこと…嫌…になった?」
「え?」

声が震える。

「コンラッド、変だし」
「変?」
「えっと……」

なんて言ったらいいんだろう。

「あたしがいても関係ないって顔だし」

いない間になにがあったの?

「嫌われたとしか思えない」

態度が違いすぎる。

「あたしはいらないの?」
「馬鹿馬鹿しい」


……………はい?


「ヨザックみたいに好きだの愛してるだの言えば満足ですか?」
「なにそれ…」
「もしが嫌なら別れますよ?」
「そんな言い方ないでしょ!」
「そう言わせたのはです」

悔しい!
悔しくて涙が出てくる。

「ちょっといない間に勝手に常識人になったコンラッドが悪いんじゃない!」
「勝手にって」
「いつもなら今のヨザックみたいなことするのコンラッドじゃないの!それがいきなり冷たくなったらあたし嫌われたかなって思うの当たり前じゃない!」

不思議そうな顔をするコンラッドに無性に腹が立った。

「今のコンラッドは嫌い!セクハラばっかりのいつもコンラッドに戻ってよ!そ
っちのコンラッドがいいよ……」

耐えきれず泣き出したあたしにコンラッドはため息を吐いた。

「なぜ泣くんですか」

その音にはうんざりとした想いが混ざってた。


***



彼のセクハラに怒っていた彼女。
彼がかっこいいと照れながら話していた彼女。
彼が可愛いとのろけていた彼女。
彼の優しさが好きだと言っていた彼女。
彼の全てが大好きだと笑っていた彼女。


彼女には彼の存在が全てで、全部だった。
代わりになるものなんて存在しない。
その世界で彼を失ったら、彼女の存在理由はないのと同じ。


「コンラッドに嫌われたみたい」

言葉にすると胸の奥からじわっと悲しみが込み上げてきて全身が冒される。
流したくもない涙が溢れて止まらない。

そう、こんな時に誰より近くにいたのは彼で、こんな時に彼女が必要としていたのも彼。

目の前の大賢者はただ黙って見つめていた。

「ごめんね」

そう言って悲しみに耐え笑う彼女が痛々しくてこっちまで泣きたくなった。

「ここなら籠って居られそうだから」

彼女が訪ねたのは眞王廟。たまたま自分が居たのは偶然か必然か。

「落ち着いたらお風呂でもどうかな?君の格好に巫女たちも落ち着かないし」
「そうする」

案内を連れて部屋を後にする彼女はボロボロだった。
城からここまで来るには馬が必要で途中からは徒歩になる。
彼女は過保護な恋人から乗馬の訓練は受けていたが一人で馬に乗ることはほとんどなかった。
それも過保護な恋人が必ず相乗りをさせたから。
まあ運動神経がお世辞にもあると言えない彼女を心配するのは当たり前だが。

ちなみに後から訓練を受けたは巧みに馬を操っている。


馬にも乗らず着のみ着のままといった状態の彼女が城から消えたのはいつ頃か。
ついさっきという時間ではないのにその割に騒ぎにはなっていないようだが。


――コンラッドに嫌われたみたい――


そんなことある筈ないが、と考えてみる。
確かにウェラー卿は変だった。にべったりな彼がそばにも寄らず、
自分がに触ろうものなら黒いオーラを纏わせ引き離していたのにそれがなかった。

もしウェラー卿がに興味をなくしていたら、周りは彼女が姿をくらませたとしても地球に還ったのだろうと思うのだろう。

―危ないな。魔王が渋谷だからかお気楽すぎじゃないか?
は双黒なんだからどんな危険があるかわからないっていうのに。

今まではこっちの世界で姿が見えなくてもウェラー卿がいたから。彼がの居場所を当てていた。
発信機でも付けられてるんじゃないかってが驚くほど。
あとは

「そうだよ、が捜さないのは何故だ?」

これは調べるしかないかな。


「お願いだからあたしのことは黙っててね?」

血盟城に行くというとは何度もそう繰り返した。

「言わないよ。だって言っちゃったら君を独り占めできないじゃないか。いいかい?僕が戻るまでここにいるんだよ?」
「わかった。待ってる」

少し進んで振り返ると力いっぱい手を振り見送ってくれる彼女がいた。
笑顔で手を振り返し前を見据えた。


ウェラー卿、事と次第によっては許さないからね。



を訪ねるとそこには盛りのついたお庭番がいた。

「猊下!助けてぇー」
「面白そうだから放っておきたいところだけど事情があってね。ヨザック離れろ」

渋々とヨザックが離れと並んで座った。

「なるほど。君がヨザックに手を焼いていたならにまで気が回らないよね」
「なに?がどうかした?」
「…消えた」
「なんで!?」
「だからそれを聞きにきたんじゃないか。で?ウェラー卿に変わったところはな
いかい?」
「変わったところと言われても…とにかく獣がうざったくて」
「仕方ないだろ。盛ったもんは」
「だーっ!くっつくな!!」
「う・る・さ・い」
「「……………」」

ため息ひとつ。ウェラー卿だけでなくヨザックもおかしい。

。ヨザックがこうなったのはいつから?」
「おとといくらいかな?」
「…?本当に何も知らないね?」
「………シリマセン」
?」

少しだけ脅すように名前を呼ぶと青い顔して立ち上がった。
そして棚から本を手に戻ってきた。

「これ、が原因かも?」
「なに?…『あなたにも出来る超☆簡単黒魔術』………
「うぅ…っ。ごめん」
「何を試した?」

が捲ったページ。………『これであいつはあなたの奴隷!いろんな命令しちゃお☆』………

「…ヨザックとウェラー卿にね?」
「……二人で試して僕も操るつもりだったとか?」
「あっはっはっ…」
「笑い事じゃないから。あ―…頭痛い」

この黒魔術に失敗したのが原因で二人の中身がおかしくなったのか。
さて、戻るのはいつかな?

「ヨザック!待て!」
「猊下あー。まだなにか?」

獣はまたに乗っかっていた。彼女を食べる気だったのだろう。止められて恨めしげにこちらを見る。

が泣いてる」
「「え!?」」
「ヨザックはそのままでも構わないけどがかわいそうだ。最終的に僕が慰めるつもりなんだけどね」
「ウェラー卿が何をした?」
「…したのは君だよ?ウェラー卿には今回非はないと思いたいんだけどね」

結果、泣かせたことは許したくないけど。

「隊長、どうなってんすか?」
「冷めてる。に興味がないみたいにね」

そんな変な顔をするんじゃないよ。本当なんだから。

「ウェラー卿を元に戻すの、協力する?」
「当たり前じゃない!」
「……協力しまーす」

は自業自得。ヨザックはといたいけど姫のことも気になるといったところか。
とりあえず三人でウェラー卿の様子を見に行くことにした。



彼は魔王陛下の執務室で護衛という仕事をきちんとこなしていた。
それはもう忠実な魔王の部下をしていた。

「やぁご機嫌いかが?ユーリ陛下」
「最悪!」

渋谷は持っていたペンを置くと大きく伸びをした。

「………?は?」
「さあ?ウェラー卿なら知ってるんじゃないか?」
「俺はずっとここにいましたしね。いないんですか?」
「あらいやだ。ウェラー卿ならいつもの居場所把握してるじゃないの」
「じゃあ捜させましょうか」
「隊長?姫が心配じゃないのか?」
「そりゃ双黒だからな。でも地球に還ったって可能性も……」
「地球には戻っていないよ」
「なんだって!?コンラッド捜しに行かないと!」

慌てた渋谷が立ち上がった。

「コンラッド、捜しに行けよ」
「いえ。捜索隊を出します。今日は陛下の護衛ができるものがいないんです。離れる訳にはいきません」
「じゃあは!?もしかしたら誘拐とか、怖い目に遭ってるかもしんねーし」
「それなら尚更。双黒が狙いならあなたのそばを離れる訳にはいかないんです」

ウェラー卿が内心焦っていれば良い。そうだとしたら僕は許せるのに。
あの落ち着いた態度はどうだ?本心を読め。

渋谷がウェラー卿に椅子に戻される。そこへの低い呟きにも似た問いかけ。

「ウェラー卿?が心配じゃないの?」

渋谷が何かに反応し、ウェラー卿を見上げる。

「仮にも恋人でしょうが!が今無事でいるかわかんないのにあんたは自分の足で捜しに行かないんだ!?
 がどうなっても良いんだ!?」

そっとヨザックが肩を抱く。そしてウェラー卿を睨みつけた。

「隊長。陛下の護衛は俺がやろう。それでも姫は捜しに行けないか?」
「…それは」
「俺はヨザックでも構わないよ」

彼は悩んでいるように見えた。そこへ渋谷の後押し。

「魔王が命令する。自分の思うように動け」

ウェラー卿が眉を寄せ渋谷を見て、軽く頭を下げて出て行った。

「ふー!」
「渋谷よくやったぞ」
「コンラッドの指、冷たくて震えてたから。本当はが心配だったんだよ」

そうか。さっき渋谷が気付いたのはそれだったのか。

「で、ヨザックおかしくないか?」
「ん?」

振り返れば自ら護衛を申し出た筈のお庭番はを抱きしめてソファに座っていた。
渋谷にものいたずらを報告して、の居場所も教えないと。

あとはウェラー卿が上手くやってくれることを願いながら。



コンラッドにの居場所がわかる能力なんてついていない。

その日の天気や彼女の気分、そういったもので推測すると見当がついた。
勝手知ったる城内だから偶々それがいつも当たるだけで。

彼は途方に暮れていた。

彼女と最後に会ったのは厩舎で最悪なことに喧嘩別れをした。
そういった時に彼女が訪れる場所は全て回った。

街へ出たのかもしれない。捜索を広域へ切り替えようかと思案している時だった。

ふと、頭に浮かんだ彼女の言葉。
確信はない。だが今は手がかりもないのだから。
彼は部下を呼び寄せ城下への捜索を命じノーカンティに跨った。


「コンラッド出て行くぞ」
「城内にいないと判断したか。さすがだね」
「行き先は姫のとこだと良いんですがね」
「じゃないと許さないんだから。あーもー!ヨザック重いっ!」
、柔らかいなー」
「猊下っ!陛下ぁ!もういたずらしないから助けてー!」
「でも僕は面白いし」
「俺に頼むなよ」
「一言命令してくれたらいいんだってば!」
「ヨザック…あんまり盛るなよ?」
「そのへんまでがギリギリだな」
「えー?ちゅーは?」
が帰って来たら好きなだけね」
「ちょっと猊下!勝手なこと言わないでよ!」
「やだなあ、自業自得だろ?

それを出されると黙るしかない。

「それでその黒魔術の効果っていつきれるんだ?」
「そこまで書いてなかったんだ。ま、超☆簡単だからもって一週間かと思うんだけどね」
「ならヨザックは放っとくか」
「ひっどーい!助けてよ!」
「「自業自得だろ?」」



やだな。気持ちがざわつく。
頭の中で何かがここにいたくないと訴えかける。

傷つくのはもう嫌。でも逃げるのも嫌。
もう少しだけ時間をちょうだい。
いつものあたしに戻って帰るから。ちゃんと笑顔でお別れするから。


様」
「うわっ!はいっ!」
「あの、お客人がいらしてます」
「あたしに?」

廊下に響く靴音。歩くリズム。

「やだ……!」

それだけでわかった訪問者。

「時間ちょうだいって思ったばっかりなのに」

ここでケジメをつけろと言うの?ここであたしに別れを告げろと?今?
怖くて、動けなくて。でも少しの望みを持ってしまう。

「コンラッド…?」

元に戻ったの?

「帰りますよ」

事務的な話し方。何も変わってない。期待した分反動も大きい。

「ムラケンめ。喋ったな」
「猊下はなにも仰いませんが」
「へ?」

じゃあコンラッドが自分で?

「いけないか?」
「…………」

どうしよう。嬉しいかも。

「まだへそ曲げてるんですか?」
「なによ、その言い方」
「違うか?」

違わないけど。

「コンラッドこそあたしがへそ曲げた理由わかった?」
「さあ?」
「…………」
「…いや、君が俺に満足していないのはわかった」
「そんなんじゃ…」
「違う?」
「違わない…かも」

いつものコンラッドがいい。あたしを嫌なくらい好きでいてくれる彼に会いたい。

「すまないが君の望む男にはなれそうにないしなるつもりもない」
「…うん」
「俺は君が好きだがそれでも埋められない溝だろう?」
「…うん」

お別れ、かな?
苦しいけど悲しくて堪らないけど仕方ない、ね。



仕方ないですませていいの?
こんな訳のわからないお別れでいいの?
第一離さないとか言ってたのはコンラッドじゃないの!?


「…何を怒ってるんですか?」
「勝手だと思って」
「じゃあ嫌いになって」
「勝手よ」
「そうなのかな?」
「…嫌いになるわよ」
「そうして」
「だからコンラッドも…」
「それは、無理かも」
「勝手よ」

零れる涙を拭おうとしてコンラッドの動きが止まった。もう役目は自分じゃないというように。
それから皮肉そうに笑って背を向けた。

「コンラッドのバカ!!」

遠ざかる彼の後ろ姿に叫び続けた。

「セクハラ男!変態!鬼畜!腹黒!」

あ、止まった。

「人が嫌だっていうことばっかり喜んでやるし、変なとこ子供だし」

思い出すのは嫌なことじゃない。全て愛しい記憶。

「でも…好きなの」

コンラッドが涙で見えなくなる。声も震える。そんなのは嫌だから泣かない。

「好きなのー!」

バカだと笑えばいい。

「コンラッドが大好きなのー!!」

しんとした部屋。

「………もういい。すっきりした」

駄々っ子みたいに喚いて少しは落ち着いた。

「……
「…なに?」
「もう一度、言って」
「変態」
「それじゃなくて」
「セクハラ男。鬼畜。腹黒」
「……わかってて言ってる?」

振り返ったコンラッドは笑ってた。

「あたしはもういいの」
「俺がまだだ」
「…っ!近寄らないで」
「もう一度言って」
「やだ」
「我侭だなー」
「だからっ……嫌いになればいい」
「できる訳ないでしょう。俺からを取ったら何が残る?」
「セクハラと変態と鬼畜と腹黒」
「それはほぼ限定なんだけど」
「あれ……………?」

腰に回された手はなに?太股撫でるその手はなに?

「コンラッド?」
「言ってくれる気になった?」

ワンピースのファスナーを下げて、裾からも手を入れて。

「っぎゃー!!!!!」

手を振り回すと右手がコンラッドの顔をぶったみたい。

「残念。左頬ならプロポーズだったのに」
「ばっバカバカバカー!!!」
バカなのは認めていますよ」
「ひぃっ!太股撫でるなー!」
「吸い付くような手触り。久しぶりだなあ」
「変態!」
「でも好きなんでしょう?」

あの、コンラッドさん戻ってる?

「コンラッド?」
「はい」
「戻った?」
「みたいですね」

目元に唇の感触。

「たくさん泣かせてすいませんでした」
「…覚えてるんだ?」
「はい。どうしてにあんな態度をとれたのか不思議でならないんですが」
「戻った……」
「おっと」

崩れ落ちそうになる体をしっかりと抱きとめてコンラッドが笑う。

「離しませんよ。さっきまでの俺がなんと言っても必ず迎えに行きます」
「…その時は遅いかもよ?」
「大丈夫。必ずこっちを向かせる。自信はあります」
「信じられない…自意識過剰」
に関してはそうでもありませんよ」

ソファに座らされてコンラッドが前に膝をつく。
いつもの彼がいつものように微笑んでいて、安心してまた泣いてしまう。



困ったように名前を呼んで右の頬に触れる。その手を掴んだ。

「……好き」

左の頬にも手を添えられたからまたその手を掴んだ。

「コンラッドが大好きなの」
「俺もが大好きです」

コンラッドが親指で涙を拭おうとするけどとめどなく溢れる涙はあたしの頬を流れ落ちていく。

「もう泣かないで」
「……無理ぃ…」
「困ったな」

眉を八の字に下げて苦笑する。

「もう…別れようって思ったりしない?」
「しないよ。絶対に」
「本当に?」
「誓って。が一番大好きです」
「……うわああん……!コンラッドが大好きだよー!!」

慰めるつもりだったのかそう言って微笑んだコンラッドにまた止まりかけた涙が流れ出した。

「困ったな」

また苦笑する彼。うん。あたしも困った。



血盟城に戻ったらユーリとムラケン、少し遅れてヨザックを引きずったが出迎えてくれた。

「えぇ!?のせいなの!?」
「だからごめんって」
のせいであたしこんなに泣いたのー!?」
「うっ………。もう本当にごめんなさい」

小さくなって謝るは見たことがなくて貴重だからもう少し怒っておこう。

。良かったね」
「ムラケンのお節介のお陰でね。ありがとう」

ムラケンが何を考えて動いたのかはわからないけど、お陰で元に戻ったし。
眞王廟の巫女たちにコンラッドが迎えに来たら通すように言っておいたらしいし。
本当に彼のお陰だ。

「お礼はキスでいいよー」
「これはこれは猊下。俺の恋人ですよ」
「なんだいウェラー卿。君が去った後は僕の出番だったのに」
「ご冗談を。誰にもを譲る気はありませんよ」

いつもの喧嘩が微笑ましい。

「しかしコンラッド、の居場所がよくわかったなあ」
「以前、が言ったんです。俺と喧嘩したら眞王廟に来ようって」
「そんなの覚えてたのー!?」
のことなら何でもね」

あの冷めたように見えたコンラッドにもちゃんと想われていたってことなのかな?
ずっと泣いてたのにゲンキンな娘だと思うけど嬉しくて笑っちゃう。
コンラッドの腕に抱きつくように自分の腕を絡ませて見上げれば驚いたように瞳を瞬かせた。
そして優しく微笑んだ。

「で?サン。ウェラー卿はどうやったら戻ったんですか?」

すすす、と隣に寄ってきたのは今回の騒ぎの元。
その必死な顔のにコンラッドと顔を見合わせ吹き出した。

「「教えません」」
「意地悪ーっ!!」


なによ。こっちは別れの危機だったんだからね。
あと少しヨザックのセクハラくらい我慢なさい。


困ったことにセクハラやめないし、変態だし鬼畜で腹黒いけど、そんなコンラッドが泣きたくなるほど大好きだよ。


〜〜fin〜〜



彩乃サマより強奪。
テーマは「冷たい次男とうざいお庭番」(笑)

〜彩乃サマより
本当は殴ったら戻るって考えてたのに、ギャグっぽくする予定だったのに何故あんな風になったんだろうね?
ヨザックはねアレもう戻ってると思うんだー。演技だよきっと。〜


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