鬼のパンツ
「うわぁぁぁん!!」
かわいいかわいい愛娘の泣き声を聞いて駆けつけると
はじかれたように駆け寄って脅えるようにしがみついてきた。
「ぐ、グレタ?!何があった?ユーリに何かされたのか?!」
「うわぁぁんヴォルフラムー!!グレタ『鬼』に連れてかれちゃうよう!!」
「『オニ』?」
何の事かわからずその小さな体を抱き上げると、もう1人の父親を問い詰める
「このへなちょこユーリ!娘を怖がらせて楽しいのか!見損なったぞ!」
「違うってヴォルフラム!わああグレタ大丈夫だから!!
グレタはいい子なんだから連れて行かれないって!それに『鬼』は俺が退治するから心配ないって!!」
「ほんとぉ?」
「大丈夫!俺が今までグレタに嘘ついたことあったか?」
「うん。この前『今日は一緒に遊ぶ』って約束したのに急に還っちゃった。」
「・・・ゴメンナサイ。」
愛娘の容赦の無い一言に肩を落とす魔王陛下は話にならないと判断。
聡い娘に事情を聞く
「あのね、ユーリと猊下のいる地球ではね、“セツブン”ていうお祭りがあって
太鼓の音が鳴ったら、悪い子探しに『鬼』がやってくるんだって!
その『鬼』と戦う武器がお豆なんだって!!」
「『豆』ぇ??」
「そ、『豆』。『鬼は外ー!』って言いながら『鬼』に『豆』を投げつけるんだ」
「・・・『豆』で?・・・お前と言う奴は!!娘が可愛くないのか?
『豆』ごときでその『鬼』とやらに立ち向かえる訳がなかろう!!」
「ちーがーうー!!『鬼』の弱点?っていうかな『豆』投げつけたら嫌がって逃げていくんだって!」
「剣で倒した方が早いじゃないか。」
「そうなんだけど、違うー!!あーもームラケン!黙ってないで説明しろよ!
本はといえばお前が『節分』にナマハゲ的要素を盛り込んで話すからややこしい事に!!」
婚約者に詰め寄られ、横では愛娘の涙目。答えに詰まった魔王陛下は大賢者サマに助けを求める。
「ヤダなぁ、渋谷。ボクが嘘を教えたとでも?」
「節分の『鬼』は『悪い子はいねぇかぁぁ!!』なんてしません。」
「確かに『悪い子はいねぇぇかぁあぁ!』はナマハゲだけど。僕がグレタぐらいの頃
節分の日に『悪い子はつれていくぞぉぉ!!』って『鬼』が来たよ?」
「自宅で?」
「いや?幼稚園。逃げれないようにしっっかりドアにガムテープまで貼られてるの。
助けを求めて先生にすがるんだけど、ものすごくいい笑顔で
『行けv』って『鬼』の方に連れてかれるんだ。またその『鬼』がトラウマになりそうなほど怖くてねぇ。。」
「そんな一部の間違った知識をうちの娘に与えないでくれるかな。」
すっかり警戒した娘は、婚約者の膝に座りようやく落ち着いたようだ。
「で?本当はどんな祭りなんだ?」
愛娘の背中を落ち着かせるようにあやしながら尋ねる。
「お祭りとはちょっと違うんだけどねー。
鰯の頭を柊の小枝に刺して戸口にさして、豆をまいて悪疫退散、招福を祈願する風習だよ。
まぁ、今じゃ簡単に『鬼は外ー・福は内ー』って言って豆を鬼役の人に投げつけて、あまった豆を
食べて病気にならないようにってお願いするのが一般的かな?」
「だから、グレタも連れて行かれたりしないから大丈夫!!」
「大丈夫だグレタ。もし『鬼』が出ても僕が倒してやるから。」
「うん!!ありがとうヴォルフラム!!」
「風習だから!!剣をしまえ?!」
和やかに説明が終わったその時、丁度ドアが開いた
「「悪い子はいねぇーかぁぁあー!!」」
其処に立っていたのは2人の長身の『鬼』。
「「!!?」」
「シマッタ!!忘れてた!!」
「あー。」
一瞬の沈黙。次の瞬間愛娘に必ず守ると誓った義父の行動は早かった。
「おのれ!『鬼』め!!グレタは連れて行かせん!!」
「わぁぁあ!!やめろヴォルフラム!お前ら逃げろ!!」
「え、ちょっと!陛下?!話が違うー!!」
「落ち着けヴォルフラム!俺だ!!」
「ええぃ!!離せユーリ!!」
「あーあー。せっかく父親としていいところ見せたかったんだろうに。」
父親の威厳を取り戻す為に協力してくれたウェラー卿とヨザックは不憫だが、あの2人だし。
もう1人の父親の株は確実に上がったし。結果オーライで。
不思議そうに見守るグレタに『豆』を食べさせながら、
(本当は、鬼に口説かれた女が、しつこくストーキングしてくる鬼をだまして隠れ蓑や打ち出の小槌やら
鬼の財産奪った挙句、豆まいて追い出してしまう話だなんて、)
この未来の毒女候補には知らせない方がいいんだろうと思った。
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ほのぼの?
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