trip



突然、女子高に舞い込んだ吉報。
歴史あるというか単に古いだけな気がするけど、とにかく校舎の改築工事を行うことになった。
前々から話はあったけど先日床が抜けて怪我をした生徒がいたので予定が早まったらしい。

その間生徒は近くの学校や公共の施設なんかを借りて授業をすることになった。
早速新学期から新しい環境に変わるということで修了式の今日、行き先の振り分けが行われた。


「うちのクラス、あの超進学校だって!」
「へえー」
「ほおー」
!なによ、そのやる気のない返事は!」
「だって…」
「…ねえ?」

クラスメイトが不満気にするけれど本当に興味がないんだから仕方ない。

「あそこ、頭はいいしお金持ちは多いし、それにカッコいい人多いんだよ!?それでも興味ないの?」

は顔を見合わせ、鼻で笑った。眞魔国で美形は腐るほど見ている。
地球のイイオトコでは少々物足りない。

それに――――……

サンには必要ない情報よねえ?」
「それをいうならサンもでしょ?」

美形な彼氏、時々ケモノ、は一人いれば十分だ。いや、あんなのがあと一人増えたらと思うと疲れる。


「じゃあ二人ともおとなしくしといてよ?イイオトコはそういないんだから」
「「りょーかい」」

担任が教室に入ってきたのでみんな自分の席に戻る。
そこで新学期からの細かな説明が行われた。

淑女らしい行動をとかなんとか。先生それは言うだけ無駄ってものだと思うけど。


**

「やっぱりムラケンの学校だったのねー」

血盟城の中庭で地球組四人でお茶をしながら教室の間借りの話をすると
たちが通うことになる超進学校はムラケンの学校だという。

「なんだよ、いいなあー。俺だけ仲間外れかよ」
「渋谷、拗ねない拗ねない。まあ僕はたちとお昼食べたりするけどさ」
手作り弁当でもいい?」


それにムラケンの動きが止まる。


「それは…人間の食べ物かな……?」
「失礼ねー」
「そうだ。ムラケン彼女ほしくない?うちのクラスの子たちが張りきってて」
がなってくれる?」
「またまたご冗談を。でよろしいかしら?お買い得よ?」
「…仕方ないなあ。じゃあまずお試し期間ということでよろしく」

「な・に・が?」

の背後から現れたヨザックはテーブルに手を付いてにっこり微笑んだ。

「姫ー?なーんか聞き捨てならない提案が聞こえたけどぉ?」
「えーん。ヨザックがいじめるー。コンラッド助けてー」

ヨザックと一緒に現れたコンラッドはヨザックに負けないくらい微笑んで指を鳴らした。

「お任せください。すぐに片付けますね」
「ちょっと、姫!姫が言うと隊長本気にするからやめて!!」
「えー!つまんない。ぼろぼろにしてやってちょうだい」
!ひどいっ」

「ところで」

コンラッドはを抱き上げ、今まで彼女が座っていた椅子に腰を落とした。
そして彼女を膝に乗せる。
が抗議の声を上げるがしっかり抱き込まれて腕から抜け出すことも出来ず終いには諦めておとなしくなった。

「……バカップル」
「独り身には厭味な光景だよな」
「これ見よがしにすることないだろうに」
「隊長だから出来るのよね。相手も姫だし。これがなら暴れてグリ江大怪我しちゃう」

ため息を吐いてテーブルに寄りかかった。

「そんな目で見てもバカップルの真似なんかしませんからね」
「ちっ…」


***


新学期。両校の生徒は浮かれていた。
かたや有名進学校でしかも男子校。かたや可愛い子が多いと評判の女子校。

夢をみてもおかしくない。

、おはよー」
「…おはよ」

まだしっかり目覚めていないに苦笑しながらこれからお世話になる学校へと向かう。
朝のラッシュには無縁だったのに少し遠くなったせいで電車通学になった。の機嫌が最高に悪くなりそう。
電車にぎゅうぎゅうに詰め込まれて、やっぱりは不機嫌になった。は窒息しかけてぐったりしている。
これからしばらくこういう目に遭うのだと思うとうんざりする。

来るだけで疲れてちゃ、授業なんか身に入らない。

足取り重く辿り着いた校門の前では見慣れた笑顔のムラケンが待っていた。

「おはよう。こっちでもの寝起きは悪いみたいだね」

が苦笑いするムラケンを軽く睨んで素通りする。

「あらら。極悪だったか」
「電車に乗るまではまだ良かったんだけどね」
「そういう君もお疲れだね。今日は始業式だけだしその後渋谷と会うけど一緒にどう?」
「あ、行く行く!―!」


先を行く暗雲を背負う友人に走りよってタックルした。
ぎゃあぎゃあ文句を言うを宥めながらムラケンの案内で教室に着いた。



「ん?」
「あ、…まあいいか」

は先に教室に入ってしまう。なにか言いにくそうにするムラケンはたった一言頑張れと言った。

どういう意味か聞き返す隙もなく自分の教室へ向かうムラケンを怪訝な顔で見送った。

!さっきねすっごいかっこいい人見ちゃった!!」
「…テンション高いなあー」
「何?そのみたいな態度。最近といいも男に興味なさすぎじゃない?」
「そうそう。合コンにも来ないし」
「だからって男の影はないし」
「でもなんか変わったっていうか」
「そういえばさっきここの生徒と一緒だったよね?彼氏?」

周りを囲まれ攻撃される。に助けを求めようと思ったら彼女は机に突っ伏して寝ていた。
そうか。その手が………

真似しようと思ったところで体育館に集合という放送が流れてそのままクラスメイトに拉致された。

****

。移動だよ」
「んあ?」

まずい。涎が…。

気付かれないように拭って教室を見回せばが拉致されて出て行くところだった。

「ねえ、さ、男できた?」
「なんでー?」
「雰囲気変わった。変に色気が出た」
「わはは。するどい」
も同じ。あんたたち二人してずるい!」

いや、ずるいって、ねえ?曖昧に濁して返事をする。あいつらを見せろって言われたらどうしようもないもの。



体育館はすごく広くて間借り中のあたしたちを入れても余裕の広さ。
そこで、ちらっと見えた人影に嫌な予感がして確認しようと目を凝らすけど探し出せなくて。
それが余計に不安になる。

「まさか、ね」

そう呟いて壇上を見上げた。うちと協力校の校長がそれぞれ挨拶をして、教員の紹介に移る。
壇上に上がるその中にありえない姿を認めて思わず声が漏れた。

「ではまず………」

こっちの気も知らず進んでいく紹介。ああ、次だ。どうかそっくりさんであってほしい。

「では続いて、英語担当。コンラート・ウェラー先生」

女子生徒の歓声がして、騒然となる。少し前にいるは固まっていた。

「それから、体育担当。ヨザック・グリエ先生」

ひらひらと手を振って愛想を振り撒く奴の姿に拳に力が入る。
横を見ると数列はなれたところで猊下がVサインをしていた。


貴方の仕業ですか………どうしてくれようか。とりあえずこの前あげたの写真は没収ね。



*****


「信じられない!!なんでどーして!?」
サンたら。さっきからそればっかり」
はどうしてそんなに落ち着いてるわけ!?一体どうしてこっちに来たのかとか、
 教師になってるのかとかおかしいとこだらけじゃないの!」
「仰ることはごもっとも」

ただ貴女が代弁してくれるから黙ってるだけで頭の中ではあいつらをどうしてやろうかとか考えてるんだけど。

「しかも女の子に囲まれてにやにやしちゃってさ」
「あら、妬いてるのー?ウェラー卿なら向こうでもああだったじゃない」
「なに言ってるの。グリ江ちゃんよ?黒目黒髪だらけだからって舞い上がってるんじゃない?」

自分のことのように腹を立てるが廊下に踏み出したところに現れたムラケン。
その顔は満足そうに笑っていて更にを不機嫌にさせた。

「ごーめーんって。機嫌直してよ」
「朝の頑張れはこのことだったのね。内緒にするなんてひどい!」
「ごめん。だってウェラー卿がさ」

がじろりと睨みつける。

「なんでもコンラッドのせいにしないの。内緒にしようって言ったのはどうせムラケンでしょ」
「ええー。ウェラー卿の肩を持つ気なのかい?」
「コンラッドならまずあたしに会いにくるはずだもん」

仁王立ちで言い切るが吹き出す。
それを訝しげに見て、間違ってる?と視線を投げるからは笑いながら首を振った。

ウェラー卿コンラートはバカだから。


******

そのまま三人でユーリとの待ち合わせ場所へ移動する。
「渋谷と合流してから説明する」と言ったっきりムラケンは口を割ろうとしなくてそれが更に苛立たせる。

「おお。怒ってるなあ…」

だからユーリの第一声がこれでもおかしくはない。
イライラしながらユーリとムラケンにお昼を奢らせ、食後のデザートを待つ。

「ユーリと一緒にスタツアしてこっちに来て、それはまあいいとしてもよ!?
 それが教師になってる意味がわかんない」
「還れる気配がないからね。大人二人がぶらぶらするのもあれだし、ボブに相談したらNASAブランド
 貸してくれたんだ。それと私立校ならコネがあるからって就職まで斡旋してくれてさ」
「まああ!なんて素敵な魔王様なんでしょ。どうせなら向こうに送り返してくれればいいのに」

が毒づくがいつものことなのでみんなあまり気にしない。

「あ、ごめん。僕だ」

鳴り出した着信音。表示された名前を見て僅かに眉間に皺が寄る。

「…もしもし?…ああ、渋谷と一緒だけど。そう。……あ、そうなんだ。じゃあこっちのことは
 気にしないで女教師と楽しんでおいでよ。にはうまいこと言っておくし。
 今? 二人とも目の前にいるよ。ははは。どうして僕が君のフォローをしなけりゃならないんだい。
 嫌だね。に振られてしまえ」

黒く笑いながらムラケンが携帯をしまう。


「コンラッドか?」
「そ。両校の教師で親睦会やるんだって。二人とも新米だから強制参加らしいね。
 どうする?敵は生徒だけじゃなくて教師にもいるみたいだよ」
「そーかもね。じゃあ今日はユーリとムラケンにとことん付き合ってもらうわ」

「「へ?」」

「すいませーん。追加お願いしまーす」

「「ええ?」」

いつもこうならいいのに、と思わせるくらい可愛らしく目の前の姫君たちは微笑んだ。

「ゴチソウサマです」

………この二人に嘘や隠し事はできない。





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〜彩乃サンより〜
ええ。続きます。(いい笑顔)

〜遊葉〜
ぎゃーっドキドキうはうは新生活ー!!(笑)