バレンタインデイ
愛情は十二分に籠もっているはずだ。
可愛い恋人が刺客になるはずがない。たとえ後ろに悪魔が潜んでいたとしても恋人の命を危険に晒すほど影響は受けていないと信じている。
だが
これは………………
信じて、いいんですよね?
「どう?美味しい?」
期待を込めて見つめる恋人の視線から逃れるように目を逸らす。もったいないが今は彼女の顔を見れなかった。
心の中で必死に謝るのが精一杯。
「コンラッド……?」
不安げな声色に慌てて視線を戻した。いくら辛い状況とはいえ彼女を悲しませることだけはしたくないのがこの男。
至上主義、悪く言えばバカ。
「初めてだったから…ごめん。一応味見はしたんだけど……。捨てよう?」
「そんなもったいない!!」
コンラッドは持っていた包みをの手が届かないよう高く上げた。
中身はチョコレート。手作りだ。
地球では今の時期バレンタインデーというイベントがある。
コンラッドは地球に行ったことがあるので内容は知っていたが、の住む日本では彼の知識とは違い
女性から意中の男性にチョコレートを贈るのが慣わしだという。
そこで彼女は初めて手作りをし、その記念すべきチョコレートがコンラッドに渡されたのだ。
綺麗にラッピングされた包み。頬を染めて恥ずかしそうにする。
嬉しくて最高に幸せだった。
一粒口にするまでは。
「!!!」
幸せな気分はすぐ吹き飛んだ。今更ながら一人の時に食べれば良かったと後悔した。
感想を待つ可愛い恋人の手前、吐き出すことも、けれど飲み込むこともできない物体。
見た目は完璧なのにその物体にはチョコレートの甘さはなく、ただの塩の塊でしかなかった。
「……ごめん」
しょんぼりと俯いたに慌てた。彼は繰り返すが命な男である。
覚悟を決めてチョコレートになる筈だったモノを飲み込んだ。
喉がひりひりする。気持ちが悪い。
だがコンラッドは急いでいつもの笑顔を作ってに微笑んだ。彼女の気持ちは本当に嬉しかったから。
「お、姫からのチョコレート?うまそー」
背後からそんな声と伸ばされた手。
「ヨザ!?」
「いやー、のチョコのまずいのなんのって。口直しさせてー」
「バカ!よせ!!」
「いいじゃんか、一個くらい」
良くない。彼女を傷つけないように頑張った自分の苦労が一瞬でパーになる。
ヨザックは正直に感想を言うだろうから。
止めるのも聞かずヨザックは口にした。そして次の瞬間窓から吐き出した。
「ヨザック!?」
「うげぇえええー!!!まっずー!!!」
「嘘……コンラッド…」
「いいえ!とっても美味しかったですよ!」
取り繕おうとしても疑惑の目は深まるばかり。少しだけ浮かんだ涙に幼馴染の寿命は決まった。
剣の柄に手を掛けたその時
「これ、のチョコじゃねえか!!」
「「は?」」
意味不明なことを耳にしてと二人顔を見合わせる。
「ソレはウェラー卿へのチョコよ」
ゆっくりと寝室側の扉が開いてそこからが現れた。
「!?どうして俺の部屋にいるんですか!?」
「反応が見たかったというかー。ヨザックはすぐ吐き出したけど
バカなウェラー卿は貰ったチョコをどうするかなって思って」
「……つまり、このチョコはが作ったものではなく?」
「手作りでーす」
「じゃああたしのチョコはー?」
「じゃじゃーん!これでーす」
コンラッドは持っていた包みをヨザックに投げた。
「のチョコレートはお前が責任持って片付けろ」
「ええー!!!」
大股での目前まで行き、持っていた包みを奪いとった。
「、ごちそうさまでした。……やはり根性ひん曲がった人のチョコレートはそれなりでしたよ」
「お褒めの言葉をどーも」
そしての手に包みを渡す。
「え?これコンラッドのだよ?」
「仕切り直しです。ちゃんとの手から受け取りたい」
「…うん。じゃあ改めて、受け取ってください」
「ありがとうございます」
包みを開け、一粒取り出したところでコンラッドの手が止まった。
「…いただきます」
考えてもしかたない。思いきって口にした。
「うっ…!!!!」
口元を押さえるコンラッドに悪魔が高笑いする。
「隊長、姫を信じすぎんのもどうかと思いますけどねー」
「今度は特製辛子風味チョコ!!どう?どう?」
「ごめんね?コンラッド」
騙されていたのだ、最初から。恋人もグルで。悪魔の影響はかなり強いらしい。
下から覗き込む彼女はやりすぎたかな?という表情で、その可愛さにまた騙されそうになる。
の顔を両手でしっかり包みこみ、口移しで特製チョコレートを食べさせる。
「んーーー!!!!」
唇を離した途端ティッシュを口に当て吐き出す。涙目にはなっていたがこのくらいお仕置きだ。
「かっらーい!!」
そう言うとポケットから同じような包みを取り出した。
「ちょっと待ってください。それは?」
が口にしようとしていたのはチョコレート。
「これがコンラッド用に作った本物のちゃん手作りチョコだよ」
ぽいっと口にすると幸せそうな笑顔になった。
「やっぱチョコは甘くないとねー」
そう言ってまた一粒手にする。
コンラッドは慌てて近寄った。
あんなまずいチョコレートを食べて本命のからのチョコレートにありつけないなんて
そんなことがあって良い筈ない。
「ちょっと待ってくださ…」
抗議の言葉を止めるように口に入れられたのはチョコレート。
今度こそ甘くとろけていく。
「意地悪しすぎた。ごめんね?」
はい、と包みを渡す彼女にまた騙されるかもしれないなんて考えはあっというまになくなった。
「どうでもいいけど」
「俺たちいるの忘れてなあい?…それより、俺のチョコは?」
「吐き出さなければちゃんとしたのあげたのにねえ。しかたないから特製第三弾!これ食べたら考えるわよ?」
「!!!」
〜〜fin〜〜
〜彩乃様より〜
ごめん。ヨザックが一番不憫かも。
遊葉
イイデスともさ!!不憫!!きゃートキメク!!(え?)
うっわー遊葉ひでぇー、でもしっかりお返しを要求するのですよv
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