開かれたドアの向こうで、ドサっと音がした。
足早に音源の元へ向かうとベットの上には虚しく布団が落ちかかっており、
ベットの主人の姿は、そこには無い。
慣れた足取りで部屋の奥まで進み、ベットに乗って向こう側を覗き込む
「。」
だからどれだけ寝返りうったんだか知らないが、どうやったらこんな広いベットから落ちれるんだ?とか、
落ちて尚、寝続けるか?とかそんなことは、この際どうでもいい。
「おーきーてぇぇぇぇ!!!起きろ!!」
「ぅあ?」
夢の世界の住人と化していた友人を文字通り叩き起こす。
焦点が合わない視線、というか気を抜けばすぐ夢の世界へ戻ってしまいそうな、、って目を閉じるな!!
「起きてってば!!」
「ぅぅ。。・・・ぉ?・・・?」
寝ぼけたままベットサイドの時計に手を伸ばす。
AM6:04
「・・・・・・・・。オヤスミ。」
「寝るな!!」
30分後。
尚もベットで夢の世界へ旅立とうとするを引き摺り起こし服を手渡す。
「なぁに?こんな朝っぱらから。」
「いい天気よ!」
「それだけで起こしたんなら、いくらでも泣かすわよ。」
怖い。目が本気だ。相変わらず寝起き最悪ね。渋々、着替え始める姿に安心して隣の部屋でお茶を入れながら待つ。
「着替えたわね?じゃあ行きましょ♪」
「はあ?」
まだ半分寝ぼけたままのを引っ張って部屋を出る。見つからないうちに早々に。
「あっら?姫?って?!こんな時間にどうしたの?!」
ありえないモノを見たと言わんばかりのグリ江ちゃんに朝のごあいさつ
「おはよう☆グリ江ちゃん!!じゃ!!」
「はよー。」
「おはよう☆って姫?!も何処行くの?!朝ごはんは?!」
「グリ江ちゃんは来ちゃダメ!!コンラッドにも言ったら絶交ね!」
「絶交って、、何処行くの!?」
「さぁ?・・・グリ江ちゃん。」
「?」
「ステイ。(待て)」
「?!!!」
流石、獣のしつけはばっちりか。
厩舎に着くとお気に入りの赤毛の雌馬ディミータが迷惑そうに顔を上げる。
飼葉を与えつつご機嫌を伺い乗り込む。
「ノーカンティ借りたら?」
「それもそうか。」
他の馬は、まだ怖いけどノーカンティなら怖くない。何より足止めにもなるし。
ノーカンティに声をかけて乗り込み、厩舎を出ると、城の入口からコンラッドが出てくるのが見えた。
「!行こう!!」
なれない手綱さばきで何とかその場を後にした。
「どうしたんです?こんなに朝早くから。」
赤の魔女は今日も朝から元気だ。
ヴォルテール城の入口の階段の一番上で数冊の重そうな蔵書を片手で軽々と持ち上げ、まさに仁王立ち。
「おはようございます。アニシナさん。」
「までこんな朝早くから?何かあったのですか?」
日ごろが日ごろなだけに遠い目で「ここでもか。。」と呟くは無視。
「アニシナさん!!」
天下のマッド・マジカリストアニシナの空いていた右手をガシっと掴む。
そのあまりの勢いに、流石のマッド・マジカリストも少々怯む。
「お願い。聞いてくれますよね?!」
「は?」
**
「・・・・何故、お前がここにいる?」
明け方近くまで仕事をして、やっと床につけると思ったら、天敵幼馴染から「もにたあ」と称した「人体実験」に
つき合わされ、目が覚めて(気を失っていた模様)朝食の席に着くと、ここにいるはずの無い人物が朝食をとっていた。
「・・・オハヨウゴザイマス。イタダイテマス。」
「それは構わんが、1人か?」
「まさか。とふたり。」
「・・・・・何度も言うようだが。」
「ゴメンナサイ。」
眉間の皺が1本増えたのを自覚する。あの魔王といい、猊下といい、この2人も。大体、・・・?
「ふたり?」
「そうですよ?」
「コンラートはどうした?」
「ナイショだそうです。」
ますますもって訳がわからない。更に問い詰めようと口を開くと
「そうそう。」
「?」
「グリ江ちゃん。昨日の夜、任務から戻ってきてましたよ?
『報告戻るのめんどくさーい』とかなんとか言いくさって陛下のところでゴロゴロ・・・」
最後まで聞かずに立ち上がる長兄に、心からの慈しみの言葉。
「大変ですねぇ。」
「まったくだ!!!!!」
「あー、あたし達がここにいるって奴等に言わないでくださいねって、聞いて無いか。」
まぁいいか。ばれたらばれたで面白そうだし。そう呟いて焼きたてパンに手を伸ばした。
「・・・・様?本当に宜しいんですか?」
「・・・いいの!もう決めたの!!」
決意の表情は変わらない。彼女達の間、丁度視線の先にあるは、毒女印の赤い液体が入った小瓶。
「・・・様の頼みでもありますから、お作り致しましたが。・・・・必要ないのでは?」
「う。。」
毒女印が決意を鈍らせる。害は無い。害は無いはずだ。・・・そう信じたい。
殊更ゆっくりと瓶に手を伸ばすと、横から瓶を奪われた。
「!」
「本気?だいたい必要ないでしょ?それともウェラー卿に言われたの?」
「コンラッドは、そんなこと言わない。」
あたしが傷つくような事は絶対に。
「だったら、」
「あたしが嫌なの!」
そう言って瓶を受け取る。蓋を開けようとすると製作者からのストップがかかった。
「飲むのなら、食後1時間後です!それでなければ効果はありません。」
あと、1時間。。決心が鈍りそう。
***
「アニシナさーん。」
「何ですか?。」
「・・・・・・害は無いと信じていいんですよね?」
「・・・こんな時にコンラートは何をやっているのです!!」
「うっわー。どうしよう。」
舌打ちしつつその場を歩き回る天下のマッド・マジカリストに不安を覚えつつ。
窓の外を見ると、
「あ、来た。」
「コンラート!!!なぁにをやっていたのです!!さっさと上がっておいでなさい!!」
天下のマッド・マジカリストアニシナからこんなに怒鳴られればたいていのヒトはびびるよね。
と、どうでもイイ事を考えた
「で?様に何言ったのです?!」
「何のことです?はどこですか?」
「しらを切るつもりですか?!あくまで自分には責任はないと言い張る気ですね!!・・・コンラート、見損ないましたよ。
わかりました。。・・・やってしまいなさい」
「だから!何の話ですか。・・・って!?何する気ですか?!」
「鳩便で飛ばしてみよう♪ウェラー卿の勇姿?」
「女装姿のどこが勇姿ですか!!!いい加減にしてください!!はどこです!?」
どうやら本当に心当たりが無い様だ。という事は、、
天下のマッド・マジカリストと2人して顔を見合わせる。2人同時に深々とため息
「「自分で見つけなさい。」」
最後まで聞かずに部屋から走り去る背中を見送って、すっかり冷め切ったお茶に手を伸ばす
「あと、どのくらいですか?」
「ちょうど15分。」
「何だ、余裕だわ。もうちょっと引っ張るべきだったかしら。」
「まったく、嘆かわしい事です。様とあろう方が。」
「必要ないのにねぇ。で、アレって本当に効くんですか?」
「効く訳が無いでしょう。でも、」
「でも?」
嫌な予感。
「吐くほど不味いので多少は効果があるかもしれませんが。」
的中。
小瓶片手にヴォルテール城の南向きのバルコニーを行ったりきたり。
あと、12分後。コレを飲めば、、、
小瓶を太陽にかざすように持ち上げる。中の液体がゆらゆらとゆれる。
見た目は、綺麗な赤。昔ふざけて飲んだカクテルに似た赤。
「うう、不味くないといいな。。」
ふと、影がさす。
咄嗟に逃げようとするが、がっちりとかざしていた左手ごと抱き込まれ、心地よいと感じた。
「何を、飲む気ですか?!」
「!!コンラッドには関係ないでしょ!!はーなーしーて!!」
ジタバタとあがくがしっかり抱き込まれているので大した抵抗が出来ない。
「本気ですか?!毒女印ですよ?!」
「効くなら飲むさ!!」
「だから、何に!?」
問い詰められて、口ごもる。言えるわけ無い。
「・・・。コンラッドには言いたくない。」
「・・・何故?」
口調が怒ってる。ちょっと泣きそうになった。
「・・・。わかった。」
「へ?」
「アニシナとに聞いて来ます。」
「やめーて!!!」
「じゃあ、教えて?」
顔を覗き込むように視線を合わされた。気まずくて視線を逸らす。
「だって、」
「?」
「・・・・たぶん太ったから。」
「??」
「お腹出てきた気がするし。」
「そうですか?むしろ痩せて、」
「太ったの!!絶対太ったの!だからコレ飲んで痩せるの!」
「ダメですってば!!太ったって、体重はかったんですか?」
「怖くて乗れない!!コンラッドにはわかんないもん!
身長あって、適度に筋肉ついてて、運動神経はいいし、毎日ユーリとトレーニングするから無駄な脂肪ついてないし!」
「は太ってませんよ。寧ろ軽くなった。」
「へ?」
そういうと軽々と抱き上げられ、思わず小瓶を落としてしまい、バランスをとれずにコンラッドの頭にしがみつく
「ぎゃぁぁぁああ!」
「ね?太って無いでしょ?軽いですよ?」
にこにこと笑う彼にしがみつきながら、割れてしまった小瓶を見る、ああ、せっかくの毒女印が。。
「でもぉ、」
「でも、じゃない。は痩せなくてもいいんです。」
「コンラッドにヲトメ心はわかんないんですっ女の子はいつだってちょっと痩せて見られたい生き物なんです!!」
「だったら、運動します?」
「運動嫌いだもん。」
「ご協力できることが1つあるんですがv」
「ぎゃぁあぁあ!!ヘンタイ!!おろしてー!!」
「大体、が痩せてこの胸が減ったりしたら、・・・・泣かしますよ?」
目が本気だ。イロイロと危機感を覚えて大人しく諦めた。
ちょっとでも綺麗に見られたいのはそんなわがままなことですか?って囁いたらあんまり幸せそうだったから、
今回は、まぁいいか。
***
「ねーねーアニシナさん?」
「何ですか??」
「コレ。邪魔だから鳩便で飛ばしても良いかな♪」
「・・・。良いでしょうはっきりきっぱり邪魔ですし。私達には痛くも痒くもありませんから。」
「ソウデスネ!!」
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