君 ガ 絶望トイウ名ノ淵ニ 立タサレ


其処デ 見タ 景色 ハ


ドンナ モノ ダッタ ノ ダロウ

君 ガ 絶望トイウ名ノ淵ニ 立タサレ


其処デ 見タ 景色 ハ


ドンナ モノ ダッタ ノ ダロウ

君 ガ モウ コレ 以上


二度ト コワイモノ ヲ 見ナクテ スムノナラ


ボク ハ 何 ニ デモ ナロウ

moments

「彼女の事が嫌いなのか?」

ひどく真摯な表情で聞いてくる元上司。
どこをどうしたらそんな質問が出てくるのか教えてくれ。

「・・・何ソレ?」

あきれつつも聞かずにいられない自分にもどうかと思いつつ質問で返す。

「・・ミリアリア=ハウさんだ」

だから、誰かって事を聞いてんじゃなくて・・・

「・・・・嫌ってんのはあっちだろ?」

・・・否、だから何でお前が心底不思議そうな顔をする?言いながら傷ついている俺の身になってみろ。

「そうなのか?」

・・・わざとか?わざとなのかアスラン=ザラ。そういえばこいつわりと根性悪かったよなぁ
イザークの挑発にも「気ニシテマセン。」ってツラしてしっかり買ってたし。

「フツーそうでしょ?コイビトを殺した仇の元お仲間デスヨ?敵意はあっても好意は持たないだろ?」

これぐらいの嫌味は許されるだろう、第一オレがこいつに気を使う必要性もないしー。

「俺は憎まれていて当然だ」

わかってんじゃんと皮肉気に返せば


「・・・それでも彼女は『憎まない』と言った。」

事実を告げられ眉を顰める。

「・・・ソレって高度な厭味だったら?」
「そうとるかは俺自身の問題だ。・・・お前は彼女がそんな事をするとでも?」

確信的な台詞を吐かれて押し黙る。そんな事目の前の朴念仁に言われずとも解り切ってる、答えは「否」

ミリアリア=ハウという少女は、「優しい」のだ。いっそ清々しい程のお人好し。

其れも上に超やら馬鹿が付くような

現に目の前にいる大事な「コイビト」を殺した仇をその有り余る慈愛で許してしまった。
いや「許す」とは、ちょっと違うのだろう。きっと。そしてそれはコイツにも解っているようだった。


決して許される事ではないのだ「未来を奪う」其れが俺たちが犯した罪



「で?何でオレが嫌っているって?」

訳のわかんないこと聞くなよー?疲れてんだからと
いかにもメンドクサイデスといった態度で聞き返せば

「自覚ないのか?」

と静かに聞かれ、イラつく。何だってんだチクショウ。
もしかしてあれか?アイツへの罪悪感から少しでもアイツに危害を加えそうな奴に釘刺すとか?
で、手始めにオレ?ハッまったく誰にでもお優しいこって。


「さっぱり?」

おどけて返せばあからさまに怒りの表情。もーいーだろ?と言って自室へ戻ろうとすれば
背中に冷たい言葉がかかる


「・・・壊れるなよ?」


意味が解らない。振り向く事も返事もしなかった。

「あーもーなぁっ」

忌々しげに壁を蹴って通路を曲がれば視線の端に見えるのは
両手一杯に洗濯物を抱え前が見えずふらふらと進む件の少女の背中

『あーあー』

案の定バランスを崩して洗濯物を落としてしまった彼女を見て
手伝おうと近寄ろうとして体が止まる

短く吐き出された嘆息、疲労困憊の背中、そして

何も映していない瞳

彼女は他人に頼る事をしない。周りに心配かけまいと笑ってそうやって全身で嘘をつく。

何かを失う事に脅え、諦めたり割り切ったりできるほど賢くも器用でもなく。

全て抱え込める程強くもない。


それなのに

他人の手を望んでいない。

まるで望む事が罪であるかのように。

ほんの些細な事だったとしても。今手伝えばひどく傷ついた目でオレを見るだろう。

何かや誰かに八つ当たる事もなく、

立ち竦むほどの痛みにもたった一人声も出さずに耐える。

そうして何事もなかったようにまた笑うのだ。

あの空っぽの笑いの仮面を顔に貼り付けて、


周りに、


自分に、


嘘をつくのだ。

そこから動けないでいるとふと彼女が振り向く
シマッタと思って言葉を紡ぐための口が開くが肝心の言葉が出てこない

今の自分の顔はどんなに滑稽だろう

「・・・女の子が困ってるのに手伝ってくんないワケ?」

こんな他愛のない事も拒絶して他の奴らにまで心配されるより
ここは大人しく頼る「フリ」をした方がマシってことか?
そんな、彼女の中に巡ったであろう考えには気づかない「フリ」をする。

一瞬固まってどうにか振り絞った感じの声。それでも「いつも」の自分を意識した口調に

「いつも」なら、それで安心するのに

今は、それすら痛くて


許せない。


「・・・コリャシツレイ?」ごまかすようにどうにか嘯くが、きっとうまく笑えていない。

顔を見ないようにして散らばった洗濯物を拾い上げる

言うな。やめろ。怒らせて傷つけるだけだ。

頭の中で叫ぶ声

言える訳がない。資格なんてない。かえって負担になるだけだ。

それでも


頼らないコイツが許せない。

一人で泣くコイツが許せない。

それに気づかない「フリ」をする自分に我慢ならない。



だからいっそ


自分しかいなくなればいい。


彼女が頼るのも、怒るのも


彼女を守るのも、傷つけるのも。


この腕の中に閉じ込めて、何も映そうとしないその瞳に自分しか映さないようにすればいい

ああそうか、確かに壊れているのだろう。
相変わらず変な所で聡い奴。

先程の元上司の有難いお言葉を噛み締め、ゆっくりと顔を上げ立ち上がり、

何も映そうとしないその瞳を見つめる

海は空の色を映すと言ったのは誰だったか。





「オレ。お前が、キライ だわ。」





言葉の刃で彼女の息を止める。一瞬だけ灯る怒りの光。
こんな風に簡単に傷つけられるのに、それでもオレを許す?

「―だから                     

 安心してオレを利用しろよ」

欲しいのは君がくれる感情の波

向けられる感情が敵意でも殺意でも

行き場所のない感情をオレに向ければいい。



君の前で君の為に死んだりしない。




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