「何故、またそこに座るの?」
問われて、答えることが出来なかったのは、
「ミリアリアさん!」
呼び止められて振り返る、赤い髪を揺らしながら慌てて駆け寄る姿に苦笑しながら立ち止まる。
「そんなに急がなくたって逃げたりしないわよ?メイリンさん?」
「す、すみません!あ、あのメイリンで構いません!」
「そう?じゃあ、あたしもミリアリアで構わないから。で、メイリン?どうしたのそんなに慌てて?」
「あの、アスラン、さんの事なんですけど・・・」
「・・・ああ。」
言われて改めて納得する。
彼女には、「彼」しかいないのだと。
「彼」をかばい、「彼」とともに逃げて、今こうして「彼」とともに宇宙にいる。
家族、仲間や友人と別れ、頼れる者は「彼」しかいない。
彼女が、「彼女」と何を話したのかは知らない。
「彼女」が言いそうな事は、想像がつくが。それを言わざるを得なかったのも、理解るが、納得らない。
そんな数瞬の思いが彼女に伝わらないように、平然と答える
「アスランでいいわよ。ザフトじゃどうか知らないけどここじゃただのアスランだもの。」
「あ、・・はい。」
平然と答えたつもりだったが、少しばかり違う感情がこもってしまったようだ。
誤魔化すように笑って次の言葉を促す。
「だ、大丈夫かな、と思って。」
「怪我がって事?」
「怪我も、ですけど・・・。」
「・・・あなたは、いい子ね。」
にっこり微笑み、歩を進める。その後を慌てたように追ってくるメイリンに尋ねる
「どうして、ザフトに入ったの?」
「え??えっと、おねえちゃじゃなくて、姉が志願して、それで・・・」
「へぇーおねえちゃん?仲良いのねvあたし一人っ子だからうらやましいわ」
「あの、」
「あ・・・ごめん。そうよね。・・・心配よね。ゴメン、無神経だった。」
素直に頭を下げると、また慌てたように胸の前で手を振る
「ち、違います!大丈夫です。・・・気にしないで下さい。あたし、・・・諦めた訳じゃないから。分かり合えるって。」
強い、子だと思った。あの時の自分と変わらないのに。
(―まただ・・・・。)
突然立ち止まった自分に驚いて、メイリンが声をかける
「ミリアリアさん?!」
「・・・あ、ゴメンゴメン。大丈夫、ただの立ちくらみ。」
「大丈夫ですか?!少し休まれた方が・・・」
「本当に大丈夫よ?今でこそこんなにいっぱいスタッフがいるけど、・・・昔は・・・」
「え?」
「ううん、なんでもない。あたしも、信じてるわ。・・・分かり合えるって。きっと、ここにいるみんなもね。」
「・・・はい!」
「何だか、話がそれたわね。アスランだったわね。大丈夫よ。キラもいるし。何て言ったってラクスもいるし。」
「そうなんですか?」
納得いくようないかないような理由を聞いて安心したように笑う彼女。いい笑顔だな、と思う。
「ミリアリアさんは、?」
「んー?ミリアリアでいいってば」
「どうして、AAに?」
「・・・できること、をしたかったのが、一番かな。」
あとは、戦争も何も関係ない他愛も無いおしゃべりをして、自室へ戻った。
眠れなくて、部屋を出て、知らず足が向かった先は、
遠い昔、 が戦闘が終わると必ずと言っていいほど現れた展望室。
当然、 が居る筈もなく
『どうして?』
目の前にいるのは、
ピンクの軍服に身を包み、泣いてばかりの
自分
『何故?』
問いかけてくるのは
何も知らなかった頃の、やわらかい世界で守られていた時の
自分
そんなの、
「あたしが、決めたからよ。」
もう知ってしまった。
―あのやわらかく優しい世界はもう無いことを。
選んでしまった。
―泣きながらそれでも守り抜くことを。
出会ってしまった。
―守りたいと、分かり合いたいと思える人に。
そして、
世界に色が戻る。
「だから、生きてなさいよ。」
見上げた虚空に呟く言葉は、祈りでもなく、願いでもなく
もう、あの頃のワタシは
いない。
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