「遅ーい」
「・・・・そりゃスミマセン。」
30分ほど前に呼びつけた張本人はすでにアチラの世界へ足を踏み入れようとしていた。
(―失敗したか?)
そう思っては見ても、時はすでに遅し。
現に自分はここに来てしまったのだから。
「で、何かあった?」
地雷か?とも思ったが聞かない事には話が進まない上に、
これから自分に降りかかるであろう事柄に納得できる理由もないのは流石にいただけない。
「・・・・・。」
グラス片手に固まる姿を横目で眺めつつ注文。
(―さて、どうするか。)
踏み込んでいいものか、知らないフリをするべきか、表情を確かめつつ推し量る。
「用もないのに呼んじゃダメな訳?」
「別にー?」
(―そうきたか・・・。)
表情は崩さず、次の手を考える。
言葉遊びのように、他愛もないやり方で、お互いの出方を予測して
駆け引きのように
そして、
一瞬頭をよぎった言葉は、すぐに消える事となる。
そう。
彼女の叫びと共に。
「もぉぉぉぉぉぉぉサイアク!!何なのよあのオトコ!!!」
―わかっちゃいたけどね。
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ヒトリノ夜