Beautiful Word

「別れよう。」
電話口から聞こえた何のひねりもないそのフレーズに思わず顔をしかめる。
「ナニそれ?・・・何で?!」
頭の芯の熱がすぅっと引くのがわかった。
頭の中は酷く冷静なのに、口から零れる言葉は明らかに感情剥き出しのソレで。
このままでは話し合いにもならないと口を押さえて短く息を吸う。
「とにかく、会おうよ?ちゃんと会って話そう?」
今度は落ち着いて言えた。携帯を持つ左手に嫌な汗がにじむ。
「・・・会えない。」
「だからっ何で!!」
「だって、お前イイ奴だから。」
「答えになってない!別れたくないって言ってんじゃなくて・・」
「オレにはもったいないよ。」
「ナニよそれ、そんなんで納得できるとでも思ってんの?!」
「・・・・きっとすぐにオレよりお前にふさわしいイイ人が現れるからじゃあ・・・」
「ちょっ!?」
ブツンという音と共に交信が途絶えた音が頭に響く
「っ!!」
即座に着信履歴でかけなおすが、聞こえてきたのは落ち着きのあるアナウンス。
『電源が切られているか、電波の』
使用方法の1つを拒絶されたソレをベットに投げつけ、拳を握り締め座り込む。


「ふーん。」
「サイアク。サイテー。何が『オレにはもったいない』よ!!
 会って話すならまだしも携帯よ!?最後ぐらいちゃんと義理通しなさいよ!!」
「そぉねぇ」
「・・・聞いてる?」
「聞いてるよ?あたしペッパーバーグとチキン南蛮のセットにするけど、どうする?」
「あたしチーズハンバーグー」
「・・・ねぇ。」
「あたしは、、、おろしにします!」
「決まった?押すよー?すいませーん」
「・・・・」
「わかったわかった悪かったってば」
「怒りながら食べると胃に悪いよ?」
「ドリンクバーのチケット持ってる人ー?」
 一瞬友達の意味を考えた。

「まぁよかったんじゃない?」
「よくない。」
「そんなに好きだったんですか?」
「そうじゃなくて、別れ方が納得いかないの!せめて」
「会って殴らせろと」
「そう。」
「えー何かその時間の方がもったいない気がするけどなぁ。」
「それは、そうだけど。」
「別れる事に関しては別に依存はないわけ?」
「もぉいいわよあんな男。別れ方もちゃんとできないような奴。」
「ひゃぁいいひゃん」
「何て言ってるかわかんないから。」
「じゃあいいじゃんって」
「所詮はその程度の人間だったって事でしょー?よかったじゃん早くわかって。」
「・・・慰めてるの?」
「もちろん」
「心の底から」
「嘘くさいですよ2人とも。」
「・・・もう一人は?今日どうしたの?」
「大都会にプチ逃亡中。」
「元気だなぁ今回はダレ?」
「さぁ、年老いた王子様だったかなぁ?」
「ダレですかそれ?」
「・・・・見る目がないのかなぁ。」
「そうね。」
「否、そこは否定してあげて。」
「難しいですよねぇ。」
「そうよねぇ?!」
「それどっちに対して?」
「大体見りゃわかるだろう。」
「わかんないもん!!」
「わかるだろう!少なくともあたしはあんなのにはひっかからないもん。」
「まぁまぁ」
「・・・わかんないもん」
「最初から調子のイイ事ばっかり言われて信用するから。」
「・・・」
「慰めるんじゃなかったですっけ?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「ドンマイ。」
「他ニモイイオトコイルサ!」
「ありがとう。。」
長年の友人の有難い容赦ない言葉を噛み締めつつパフェのアイスにスプーンを突き刺す。


食後のデザート食べ終え店を出ると雲ひとつない青い空。
「天気いいー♪」
「・・・」
「ほら、背筋伸ばせー?」
「うん。」
「今この時間までこの先二度と関係のない人間の事考えるって勿体無いじゃん。
 もう関係ないんだし、それよりも次に来るであろう運命の人の為に自分磨く方が良くない?」
「来るといいな」
「そこ、黙れ★」
「そうよね、そぉよねー!!何であんな奴の為にこんな思いしなきゃいけないのよ!」
「そうですよぉーv」
「ハイハイ、目指せイイオンナv手始めに格好からかしらねー」
「中身までは誤魔化せないけどね。」
「ハイ行くよぉ!!!」

あんな別れ方今でも納得できないけど、悔しいし、
―好きだったけど、今も好きかもしれないけど、
こんな晴れた日に吹っ切れるならそれも悪くない。
また誰かを好きになって、別れた時はまたこんな風に話して笑えるようになればいい。
 


―幸せになってほしいものです★  Back