「―説明してくれる?」
顔に微笑を貼り付けたまま、視線は前から外さず、
口元を動かさず器用に低い声で、隣で軽く手なんぞ振っている友人に疑問をぶつける。
「だって、コレだって言ってたら来なかったデショ?」
同じく微笑を貼り付けたまま、こちらも視線は外さず低い声で答える。
「―確信犯かよ。」
心持ち半眼で横を見やり毒づく。
「それが何か?」
こちらへ向き直り、にっこり最後勧告。
「いつまでも昔引きずってどーすんの?アンタに必要なのは出会い!いい?!
自宅から職場まで車で約5分。職場にいる独身男性は全て彼女持ち、外界から閉ざされた
あの職場で他に出会いがある?!ここまで来たら、覚悟決めなさい。」
「否、引きずってないから。っていうか昔ってどれをさしてる訳?」
速攻でツッこむがあっさり無視される。
本日のお相手がこちらへ向かってくるのを見ながら、「彼女」の言う覚悟を決めようとため息ひとつ。
別に、それほど嫌というわけでは、、、嫌なもんは嫌だが。
(引きずる過去もないし。)
それは彼女も知ってるのでさっきのはただの勢いだろう、
どうせ、急遽人数合わせで頼まれたか、それか、
「言い忘れてた、今日あっちの奢りだからv」
記憶違いでなければ本日最高の笑顔でスバラシイお言葉を告げた彼女。
(―飴とムチ。)
などと考えながら拝みたくなった。
「「「「かんぱーい!!」」」」
まずはベタに自己紹介からーなどと頼んでもいないのに仕切りだす男を見ながら
何処でもいるんだなぁこういうのとしみじみ考える。
(―場にひとりいると便利よね。・・・・うざいけど。)
本日のお相手は某有名会社の企画営業部の皆サマ。
こちらの陣営は友人と友人の会社の後輩サン。
後輩サンの狙ってる人は左のメガネ、と。
心中で確認事項を並べながら、ジョッキをあおる。
「えーみんな同じ会社?」
「この子は違うんですよー」
話をふられてにこやかに応じつつ、とりあえず2杯目を頼む。
「どこの会社ー?事務やってんの?」
言う必要性がまったく感じられず、あいまいに答えて
大して興味も無いが自分の事に話をふられるよりマシなので質問を返す
「企画営業部って大変そうですねー。」
「たいっへんなのよぉぉ事務職には絶対わかんないね!」
(・・・・)
「えー事務だって大変なんですよ!ねぇ!」
「そーよねぇ!!」
仲良く言い返す女の子達。
少なくとも1人の本性は「女の子」と呼ぶにはムリがあったが深くは考えないようにした。
「だって雑用とかやってにこにこ笑って1日中暑くも寒くもない所で仕事するわけでしょー?
シアワセじゃん!」
「お前それ失礼ー」
「うわサイテー」
大してそう思ってもなさそうな他二人が女の子を擁護する。
「雑用ばっかりじゃないですよう!」
手をばたつかせながら後輩サンが反抗。かわいーなぁ。
「こっちは下げたくもない頭下げて這いずって仕事とって来てるのにさぁ」
今度は愚痴り始めたよ
「ごめんねぇコイツ一昨日から取引先とトラブっちゃててさぁ」
「だってアレは、こっちのミスじゃなくてあの会社のま」
「ハイハイ、わかったわかった飲め!今日は思う存分!」
―失礼発言。自己中心的被害妄想。
仕事上のミスを何処で誰が聞いてるかわからないオープンな場で話そうとする。
決定。
(さっさと潰そう)
営業モードにシフトチェンジ。にこやかに店員を呼びとめ次のグラスを持ってきてもらう。
「聞いてるーぅ?」
だいぶろれつも回らなくなってテーブルとオトモダチになりながらグラス片手に何度も聞いてくる
「ハイハイタイヘンデスネぇー」
「イヤ!聞いてないだろ!お前!」
よくわかったな。しかもお前呼ばわり?にこやかに目の前に
焼酎の水割りという名のロックを差し出す。
「もう、ほっといていいよコイツ。あーもーお前飲み過ぎ」
はい、飲ませましたから。そりゃぁもう。
「だってー」
「ハイハイオヤスミ」
「おやすみーぃ・・・」
(ヨッシ!!)テーブルの下でガッツポーズ。
「お酒強いよねぇー」
「いやいや、そんなことないですよーv」
「日本酒ってとこがまた・・・」
「渋いでしょv」
「可愛げねぇぇぇ」
「・・・あははははははは。」
「わはははははっははははははっは」
笑いながらちょっとと言いつつ席を立つ。
御不浄に入って鏡の前で人の気配がない事を確認。
貼り付けたままの笑顔を外す。
そこへ図ったようにほろ酔い加減の友人登場。
「オツカレ」
「おつかれーv」
「楽しそうね」
「おかげさまで♪Good Job!!」
「もしかしてこの為に呼んだ?」
「マサカ!アナタのために!!」
「ハイハイ。」
「イヤ冗談じゃなくって、あれは予定外だって。最初まずいなぁとは思ったんだけど・・・」
「酒が美味しくて。」
「そう!!」
「・・・・」
「ゴメーン」
「ダイジョーブ、それなりに楽しんでるから。」
「好みはいた?」
「潰すのに夢中で大して見てない。アンタは?」
「えへへーv」
「ハイハイカワイイカワイイ。旦那泣かすなよー?」
「そんな小さなオトコじゃないし♪」
「・・・ノロケ?」
今はここにいない人の良さが滲み出たような友人の彼氏に心からの賛辞を贈った。
「さて、行くかー」
身支度整えドアに向かう
「顔戻る?」
鏡ごしにそう尋ねる友人に
片手で立て付けの悪いドアを押しながら答える。
「誰に言ってるの?」
「腹グローい。」
「最っ高の褒め言葉ね」
「白ワインなかなかよ?」
「了解」
さぁ心の準備はOK?
席に戻り、名前も覚えていない目の前のオトコの話にテキトーに相槌をうちつつ店員を呼ぶ。
「すいませーん。グラスワインの白ひとつー」
-ハイ、そこー。酒飲めねーじゃんとかいうイタイツッコミするな? back→
