永遠にともに



                                              今日、一番好きな人が結婚する。


窓から差し込む穏やかな陽光。


白く薄い儚げなレース。マリア・ヴェール越しの世界。


手元に視線を落とすと、繊細な刺繍の施された礼装用の純白のミトン。


アンティークのサイドテーブルの上にはダリアとバラのオーバルブーケ。


扉の向こうはどこか別世界のような落ち着かない時間が流れている。


椅子から立ち上がると、ふわり広がるドレスの裾
それだけで笑みがこぼれる自分が可笑しくて、わざと翻す。

そして、



「…ねぇ。ちょっと落ち着きなさいよ。出産間近の熊じゃないんだから。」
「これが落ち着いていられるか!?って言うか何でお前そんなに落ち着いてられんだよ。」
「当事者でもないくせに自分が結婚するかのような大騒ぎしている人が傍にいるからかしら?」
「何を言う!お前が結婚するんだぞ?!」
「何か、アレよねぇ。卒業式とかで感極まって号泣してる人とか・お化け屋敷で本気で怖がってる人見るとかえって引くって言うか。」
「俺の緊張感を返せ!!」
「ドレスの裾踏んだら殺すわよ?」
「…こんな花嫁イヤダ。」

いつもの様に詰め寄ろうとしたので笑顔で出鼻をくじいてやると無理矢理体をひねって壁に泣きつく


いつもよりも、しゃんとした服を着て、いつもの、やりとり


「ほら、せっかくちゃんとしたの着てるのに、袖のトコ汚れるわよ?ネクタイもちゃんと直しなさいってば。」
「おお。」
「あーあ、世話かけさせないでよ。あたし今日主役よ?」
「だから俺の世話はいいから自分の準備は?!化粧直しはいいのか?」
「あとは出番待つだけだもん。大体、身内でもないくせに新郎より先に花嫁姿見るってどうよ?」
「ああ?当然の権利だろ。」
「ほぉう?なら、あたしの花嫁姿見てご感想は?」
「ウェディングスタッフってすげーな。」


まじまじと感心したとばかりに頷く。ドレス姿だって事忘れて蹴りいれそうになって思いとどまる。

「冗談だよ。きれい。」
「ドレスが。でしょ?」
「ドレスがきれいなのは当たり前だろ?うん。…似合ってる。」
「…何?何か悪いもの食べた?」
「口開かなきゃちゃんと花嫁さんだもんなぁ…詐欺だ。」
「開いても花嫁さんなんです。」
「…お前、結婚するんだなぁ。」
「えー何よ今更?寂しいの?」

「うん。」

茶化した言葉は素直な返事となってかえってくる。
居た堪れなくなって、俯く相手の頭に手を伸ばして、誤魔化すようにくしゃっと髪を撫ぜた


「幸せになるよ。」
「ああ。」
「あの人を、幸せにするの。」
「ああ。」
「だから、」




伸ばしていた手ともう片方の手を取られ、相手の掌にのせるように両手を合わせ、

儀式のように、

祈りを、捧げるかのように、


「―おめでとう。」

「―ありがとう。」



始まりの鐘の音が鳴り響く。



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