「いいですよねぇ先輩は頭いいから何でも出来て・・・あたしなんかぁ」
―チョット、待て。
「先輩みたいに何でも出来るヒトには、あたしなんかの悩みなんて解からないでしょうね」
―・・・・・・・・・。
運命なんてクソ食らえ―RUNAWAY BLOOD―
仕事も5年目にもなれば、それなりの貫禄が出ないと自分的にも・対外的にもマズイ。
上司の理不尽な要求にも、納得こそ出来ないにしろ、口元だけ笑って流すぐらいの腹芸は
いっそ必要技能だ。
上の立場である人間の行動にいちいち憤っていてはこちらの精神がもたない上に、
それ相応のダメージを与えても諸刃の刃で自分に跳ね返ってくるのは目に見えてる。
自分の一般常識が通用するほど社会は・組織は甘くない。
割り切る・諦めるのではなく限られた条件下の中でシタタカになる事。
納得できずに、受け入れられずに、悔しくてトイレで泣きながら壁に八つ当たりした事も、
気心知れた仲間と飲んで、食べて、歌って、愚痴って憂さ晴らしした事も、
言うつもりもないし、絶対に言わないけど。
―・・・・・・・コノヤロウ。
「出来ない=努力しない、じゃないデショ。」
思わず出た本音と低い声に一瞬部屋の空気が下がった。
「それはそうなんですけどぉ」
無意識とはいえ本心からの一言も、嫌味と受け取られる事もなく
ただのアドバイスとして受け取られたらしい。
理解力の低さに愕然としながらもどうにか次の言葉を捜す。
「・・・できるよー、あたしでも出来るんだし。」
「やームリですーぅ、眠たいしー昨日寝たの2時だったしー彼氏が昨日来てたんですけどぉ」
「否、でもコレ終わらせないと他の仕事も終わらないし、ね?今日はアレもしないともう間に合わないから」
「えー?!今日残業ですか?」
「明日の朝には終わっとかないと間に合わないって説明したよね?」
「今日彼氏が迎え来るって言ってたんですよぉ、・・・7時までに終わりますか?」
「・・・ムリじゃない?」
記憶違いでなければ、この仕事をこの子に頼んだのは1週間前。
余裕を持って昨日までにって伝えていたはずなのに、今日の段階で半分も終わっていない上に
日常業務も終わっていない。
・・・・コイツ。
―使えねぇぇぇぇぇぇ。
未だ何だかんだと言ってはいたが当然聞く気にもなれず、己が仕事にとりかかる。
まだ時間的に余裕のある仕事だったが、この分では十中八九どころか確実に予定外の仕事で進まなくなるのは目に見えている
今のうちに少しでも進めておく、自分の為に。
「で結局終わったの?」
「終わらせたの。あたしが。半分以上仕上げたの。」
「オツカレー」
「どうにかして、アレ、どうにかして」
「いやー、未だ手が出てない君に心から拍手ー。」
「サスガよねアタシ!!」
「上は何も言わないの?」
「会社的には、先輩も産休入るし人手不足だから辞めてもらっちゃ困るんだけど・・・」
「いなくていいと」
「いっそ辞めてくれ、と」
「眠たいじゃねーよとか」
「ヒトがせっかく教えてるのにっ!!」
「仕事の段取り悪すぎ、と」
「予定通り終わった例ないしね、残業ってわかってるのに彼氏と遊ぶ約束なんかすんじゃねー!!」
「大体お前の彼氏の話なんざ聞きたかねぇと」
「DでBよ?!拷問?!嫌がらせ?!」
「・・・」
「・・・」
「・・・苦労してるね」
「イワナイデ。」
半ばヤケで答える。
「まぁ、気の毒だからジュースでも奢ってやろう」
「アリガトウ」
何度目かの愚痴のこぼしあいの末、結局は何にも状況的に変わらないにしろ、
やり場のない怒りとか諦めとか悔しさとかそういった物の何割かは消化できる気がしなくもない。
吐き出せる場所がある事はシアワセか。
「さっさと辞めてくれるよう呪い発動しとくから」
「・・・効くといいな、ソレ」
誰の為じゃなく自分の為に―
イツカ笑えるその日まで。
―アナタは誰の味方ですか?と聞かれれば真っ先に「自分」と答えます。
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