―例えば末期の癌患者に「アナタの余命は後半年です。」と宣告したとして、
―死が訪れたその時、初めて、その事実を受け入れる事ができるのではないかと私は思う。
太陽が丁度真上に来たあたり、照りつける日差しとアスファルトの熱気で
じわりと嫌な汗が噴きだす。
緩やかに続く坂道、半ばうんざりしつつ顔を上げる。
アスファルトの蜃気楼、見慣れた町並み、夏独特の高い空
そして、白い猫と白スーツのサラリーマン。
(・・・・・。)
そぐわない。
一瞬、幻覚かとも思ったが、
自分は正気で・色んな意味でやばい代物には手を出していない・どころか、
こんな田舎じゃ生まれてこのかたそんなやばい代物なんて見たこともない
全身黒で統一する人はいても、全身白はなかなか人も場所も選ぶ。
(オプション(猫)も白とは・・・気合はいってるなぁ)
我ながら間の抜けた感想だとも思うが、暑さで茹った頭で考えるのはせいぜいその程度。
歩を進めるごとに詰まる距離、コンタクトで1.0に矯正された視力でやっと顔を拝める。
(身長は頭1つ上ということは180ぐらい?真っ白ふさふさーこの辺の猫じゃないよねーこの人の猫?)
手を伸ばせば届く距離になり、道の真ん中から動こうともしない直立不動の白スーツマンと猫をかわそうと
右にそれた時
不意に左腕を掴まれる。
咄嗟の事で正確な状況判断が出来ずに一瞬固まる自分を尻目に、サングラスを外しにこりと笑う。
―綺麗だと思った。
「こんにちわ。突然ですがアナタは今から24時間後に死にます。」
きっかり1秒後。右手に持っていたバックをその端正な顔に綺麗にヒットさせ掴まれていた左手を
振りほどき全力で逃げる。
コレが最初の出会い。
これから始まる「最後」へ向けての幕開け。