残り時間をどう過ごすかなんて、考えてる内に時間が経ってしまう。
時間を止める事はできない。
自分の鼓動を自分の意志で止める事ができないように。
「・・・さて、行きますか。」
「・・・切り替え早すぎ。」
ぐずぐずなんかしてられない。
行きたいところも・やりたいことも限られた時間の中で出来る事には限りがある。
どれから?何て考える暇があるなら動いた方が手っ取り早い。
緩やかに「死」を待つなんて、
「ガラじゃないでしょ?」
ベンチに座ったままの男を見下ろし、精一杯の不敵な笑みを浮かべて。
焦るな、と、自分に言い聞かせる。
水中で死ぬまで泳ぎ続ける魚のように。
死に場所探して、辿り着いた先が遊園地。
「案外、ロマンチスト?」
「案外は余計。・・・我ながらベタな所えらんだなぁ。」
バスに揺られて移動している間中、お互い一言も話さなかった。
シロコさん(猫)つれて乗ってるのに運転手はおろか・客も反応ナシで
「ああ、便利だな。」と思った。都合のいいように出来てるものだ。
降り立ったバス停は海が近いのか、潮のにおいがした。
平日の、それも広さも規模も小さいとあっては客の入りもたかが知れてる。
なのに、家族連れやら、明らかに学生カップルの視線を感じるのは気のせいか?
「・・・・絶対、目立ってる。もっと、こう目立たず当たり障りの無い人生をおくるはずだったのに。」
「・・・聞き間違いだな。うん。」
「とりあえず、絶叫系は制覇よねー。」
「・・・会話が突拍子も無いのはわかった。」
自意識過剰からか感じる周りの視線から逃げるように移動しながら、
端から見たらどんな風に見られるのだろうなどと考えると、笑えて来る。
24時間後に死亡宣告された女と死神らしき男だと、この中の誰が想像できるだろう。
「バカップルって思われてたりして。」
「迷惑?」
「ソレらしくしてみる?」
冗談半分でつないでみた手が昨日と同じく暖かくて、振りほどかれるかと思ったら
そのまま繋いでいてくれて、
そのまま泣きたくなる。
「手始めにいっときましょう。最大速度100km/h。」
「手始め・・・。」
たて続きに絶叫系を4回。回転系を3回。流石に具合が悪くなってきたのに
容赦なく引きずられ、次のアトラクションに向かう頃には、
―時間が迫っていた。
「・・・・・・・これにする?」
「係員の人に迷惑かしらね。」
「・・・・ちゃんと家まで送り届けるよ。」
「どうせなら格調高く、お姫サマ抱っこでね。」
見上げた先には観覧車。
緩やかに廻る観覧車の一番上近くに、太陽が差し掛かり逆光で見えない。
あの太陽が昇りきる頃。
幕引きの時間。
酷く頭の中がクリアなのに、心臓の鼓動が耳元で聞こえる。
乗り込んだ観覧車の籠の中で向かい合わせに座った男の顔を見た。
穏やかな、悲しい笑顔で、
気がついたら抱きついていて、体が勝手に動くというのを初めて知った。
片方に2人分の重さが加わり少しだけ傾き揺れる。
揺れに任せて言葉を口に乗せる。
「迎えが、貴方でよかった。」
「ありがとう。」
体がこわばるのを感じる、
だから貴方が責任や罪悪感を感じる必要性はどこにも無いのにと笑いそうになりながら
「なまえ、教えて?」
人生最後に覚える名前が、貴方の名前だなんて、
「いい、と思いません?」
耳元で笑う。横目で伺えば敵わないって顔。
顔が近づき囁かれた言葉は
「にゃぁぁー。」
いつ乗り込んだかわからない。気がつけば向かい側の席にちょこんと座っている相棒。
腕の中には。
彼女。
―最後の言葉は彼女だけのもの。
覚えていて
私のことを
永遠のサヨナラ
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