鯨 

「・・・・・。」
「・・・・・。」

肩で風を切って進む。そんな描写を実際に目の当たりにして
ただついて行くしかできないのも情けないと思いつつ
有効な打開策があるわけでもなく、ただその背中を見つめる。



彼女に会ってから2時間。
彼女に対して自分が説明した事は、


1.彼女の寿命は24時間である。

(嘘だとは思ってないみたいだけど、信じてもいないってところか。)


2.自分が何者かは説明できないが、神の使いもしくは死神とでも思ってくれればいい。

(鼻で笑われた・・・・・。)


3.普通のヒトにも見えるが、自分の存在に関しては特に疑問を感じないようにしてある。

(ひとしきり悩んだ挙句、「路上ストリッパーやっても捕まらないって事?」その質問はどうよ?・・・やらないからな。)


4.相棒(猫)の名前はない。

(俺の名前は聞かないくせに。)


5.相棒が(猫)なのは上からの命令である。

(・・・気の毒そうな顔するな。。)


6.スーツは制服?である。

(満足そうにうなずいたのは、似合わないから?)


7.夢オチでもドッキリでもない。

(カメラも看板も目覚ましの音もアリマセン。)


8.死因は「突然死」の予定である。

(望みとあらば、と持ち掛けたが「他人巻き込むほど落ちぶれちゃいない」との男前な答え。端からそんなつもりもなかったけど。)


9.死ぬのは、生れ落ちた事が、罪だから。



(・・・・。)




「なぁ。」
沈黙に耐えかねて声を上げる。
彼女に背中を向けられる事が、耐えられなかった。

ゆっくりと振り返る。
その顔に表情は無く、ただ、何も映さない目で俺を見る。

その目が、許せなくて、



声が強く出た。



「他に聞きたい事無いわけ?」



けだるく目を細めゆっくり息を吐く。


(溜息?!)




「何を聞いて欲しいの?」




―質問の意味がわからず一瞬止まる。


そんな心中を察してか質問の言い方を変えた

「あたしに話したいことはありますか?」




弾かれた様に言葉をぶつける



「質問を質問で返すなって言ったのはお前だろ・・・!」



先程の彼女のように。



虚を衝かれ見開いた瞳を見て、しまったと思ったが、口から出た言葉はもう取り戻せない。
いたたまれなくて視線を逸らす




「ごめんなさい。」


声と共に深々と頭を下げる彼女がそこにいて、

顔を上げた彼女の目には俺が映っていた。

「ほんとにねぇ、自分で言っといてねぇ。えーと、聞きたい事だったわね。 無い、です。」

(無い訳がないだろう・・・!!)
心のツッコミに気づいてか笑って言葉を続ける。


「どんな答えであれ、あたしの納得のいく答えじゃないだろうから。質問する意味がないの。」



だからゴメンねとまた軽く笑う。




「わかんないだろ?聞いてみない事には。」
「じゃ、明日の○ト6の当選番号は?」
「・・・・・。はい?」
「だから、明日の○ト6の当選番号」
「・・・・。」
「答えられないでしょ?」
「・・・・ムリデス。てか、何でその質問?」
「葬式代もバカにならないしなぁって思ったから。」
「そんなことじゃなくて、」
「そんなことって、結構重大なんですけど?」
「スミマセン。」
「ワカレバヨロシイ。」
「・・・他には?」
「えー、面倒くさ。」
「他 に は ? 」



ハイハイといった風に、一拍置いて、足元で見上げていた猫を抱き上げ。



「あたしに何か話したい事はありますか?」





静かに、穏やかに、聞いてきた。

BACK