「お買い得よ?」

極めて軽いノリの口調。

信じてない訳じゃない。
自分の中に、確かに存在する気持ちを認めていないわけでもない。

ただの意地。

ツマラナイ、ちっぽけで些細なプライド。



また  あした





の逆鱗に触れ、その許しを得る為に、ついに悪魔()の手を
 取ってしまったウェラー卿コンラート。代償は1週間のおあずけと悪魔の下僕。
 憐れ!彼の運命はいかに?!

「・・・楽しそうね?猊下。」
「コレを楽しまずしていつ楽しむんだい?」


何処から用意したのか、スポットライトの中心でのマイクパフォーマンス。
ソファーにくつろぎつつ、他人事のようにお茶を飲みつつ眺める。

「で、?次は何をすればいいんです?」

半ばヤケのように、今回の憐れな被害者が尋ねる。
元はと言えば自分が引き起こした結末なのだが、
嫌な事は一刻も早く終わらせて、晴れて恋人との幸せな日々を取り戻す為に、彼も必死だ。

「やっぱり基本に返ってパシリかい?」
ダカスコスに合図をしてスポットライトを消してもらい、ソファーでくつろぐに尋ねる。
刑の宣告を待つコンラートの顔も、こわばったままだった。

「んー。・・・・何かもういいかなぁ。」

「「?!」」

その発言に、その場にいた全員が固まる。硬直状態からいち早く抜け出したのは、やはり大賢者サマ。

?!何を言ってるんだい?!君らしくも無い!!こんな絶好のチャンス!」
「1にウェラー卿イジメ・2にウェラー卿イジメ、3も4も5もウェラー卿イジメなが?!」
「熱でもあるのか?!誰か!ギーゼラ呼んで来い!!」
「うわぁぁんアタシを残して死んじゃイヤー!!」
「最後を迎える時、人が優しくなるってホントだったんだ・・・!」
「っていうか、何の罠ですか?!」

部屋の外から様子を伺っていたギャラリーまでもが加わり、好き放題な発言は続く。

「あの『』だぞ?!何か裏があるに決まってるジャリ!」
「おちつけヴォルフラム、語尾が戻ってるぞ。・・・案外めんどくさくなっただけか?それならそれで好都合だが。」
「そんな面白みの無い。それか、1週間君が下僕として傍にいるのが嫌とか?」
「ありえるわぁーの傍に隊長って・・・『自分にとっても罰ゲーム』とか?」
「だったら、ムラケンに一任するんじゃない?『好きに使っちゃってー』って。」
「魔力があればアニシナさんに売りつけるぐらいはするだろうなぁ。よかったな名づけ親。魔力なくて。」


カタン。

カップをテーブルに置いた音が部屋に響く。
恐る恐る振り向くと、・・・皆の予想通り、完璧な笑顔のが其処にいた。
そしてやはり目は笑っていなかった。

「・・・・ご希望とご期待には応えなくてはね。」
「・・・無理はしないほうがいいと思いますよ?」

にこやかな発言とは裏腹に部屋の温度は確実に下がった。

「陛下ー、護衛借りますわね?猊下には後ほど。好きなだけ使ってくださいな。」

そう言って、上着を手に部屋を出て行く。
大賢者は至極つまらなそうにしていたが、残された達は、心からの彼の無事を祈った。


**

「何処にいかれるんです?」
「買い物。何処にって言われても、この辺の土地勘なんて無いから任せる。」
「じゃあ馬を準備してきます。」
「貴方と2人乗りしてサンに妬かれたかないわ。遠出するつもりも無いし。ああ、財布はしっかり準備してね?」
「・・・仰せのままに。」

天気も良く、風がそよぐ。長兄お手製のフードを目深にかぶり、日本人特有の黒髪を隠す。

「何を買うんです?」
「さぁ?」

会話終了。
気まずい。気まずすぎる。嫌な汗をかきつつ、沈黙の刃をどうにか切り抜けられないものか必死で考える。
共通の話題と言えばか、ユーリか、猊下か、ヨザックか。

「・・・ヨザックは・・」
「ソレガナニカ?」

・・・見事地雷だったようだ。踏んでしまったからには「何でもないです」とも逃げられず、
心の中で最愛のに助けを求めた。


***

一方その頃、血盟城ではとヨザックのお茶会が始まっていた。

「・・・何か。」
「・・・うん。」
「わかっちゃいるんだけど。」
「うん。」
「「・・・・」」

沈黙。
紅茶の蒸らし時間を計る砂時計の砂が落ちきった瞬間、2人して立ち上がる。

「グリ江ちゃん!!」
「姫!任せて!すぐ馬連れてくるから!!」

乙女走りで厩舎へ向かうグリ江が戻ってくる前に準備を整えなければ!

(あの『』と『コンラッド』だし?)
(何ていったって『隊長』と『』だし?)

本人達に話したら心底嫌がりそうな心配なのは百も承知だったが、
そんなことより、

((コンラッドがイジメられるの見てみたい!!))

恋人としても・幼馴染としてもちょっとズレた好奇心を当事者達は知る由もなかった。


**

「ヨザックに何かされたんですか?」

覚悟を決めて尋ねると、沈黙。・・・そういうことか。

「・・・獣ですしねぇ。」
「・・・ウェラー卿?今のご自分の立場はお分かりかしら?」
「アナタサマの忠実なる『下僕』ですよ?」

立場逆転。余程悔しいのか歩調が速くなった。
笑いながら後に続く。珍しいこともあるものだ。

「大蔵省破綻させてやる・・・・!文無しになってに振られるがいい!!」
「何気に物騒な事言ってますね・・・。」

     *

「で、グリ江ちゃん?に何したの?」
「・・・・。グリ江からが前提なのね・・・。」
「だって獣だもの。」
「姫がっ!どこぞの腹黒隊長の影響を!!」
「うんvでも誰かさんの恋人の影響もあるんじゃないかな?」

否、ソレって笑顔で言えることでは・・・。

「恋人ねぇ。。」
「何?」
「そう思ってるの俺だけかもしんない。」
「はぁ?」

昨日の達の一件が落ち着き部屋でくつろいでいたに何気なく尋ねた一言。
前々から気になって、の説得の時もちょっと引っ掛かっていた疑問。

『・・・ねぇ?グリ江のこと好き?』
『・・・読書の邪魔をしないグリ江ちゃんがだいすきー』

読んでいた本から視線を外すことなく答えられた一言に、・・・何かがキレた。

「で、まさか襲っちゃたわけ?!」
「・・・返り討ちに遭いましたけどね」

ハードカバーの角で殴られた。・・・一歩間違えば本気で死ぬぞ。

「だってー、からちゃんと『好き』って聞いた事無いしー」

手綱を引きつついじけるお庭番。否、そのカッコで可愛くいじけられても・・・

「だからって、それじゃコンラッドのこと言えないじゃない!!」
「面目ない。。」
「どちらにしてもが悪いけど。ヨザックも悪いよ?」
「あら?の味方しないの?」
「味方になるのと、良い・悪いの判断は別。」
「流石ー。」

敵わないと思うのはこんな時。非常にオトコマエで惚れ惚れするね。

「グリ江負けない!の寵愛勝ち取ってみせるわ!!」
「ハイハイガンバッテー。それにしてもやっぱり、類は友なのね。」

「付き合い考えるよう言わないと」と呆れ顔でため息をつきながら毒舌発言。
その類と恋人なのは貴方様ですと言いいたくて飲み込んだ。




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