「いらっしゃい、おや、お嬢さん彼氏とかいも」
「「違います。」」
「そ、そうかい」
異口同音、にこやかに言葉の最後を待たずに完全否定。
関わらない方がいいと思った店の主人の判断は正しかった。
「さて、どれにしようかなー。」
さほど広くない店の中にあるのは数々の雑貨と服やらお菓子やら、次々に手に取る姿を見て
を連れて来たらきっと喜びそうだと考えて、苦笑い。
「何ぼさっとしてんですか?さぁ、どっち?」
「?」
差し出されたのは、レトロピンクのニットワンピと藍のベロアのワンピ。
デザインとレースも凝っていて、どちらも可愛らしいものだったが。
「・・・?言いにくいんですが」
「・・・ご安心を。ワタクシが着るんじゃないから。」
「ああ、どおりで。」
「自分でもわかってるとは言え、納得されるのもそれはそれで腹立つわー。」
「そっちの藍のワンピースなんか、が着るならだいぶ底上げしないとせっかくの胸元のデザインが台無しですもんねぇ」
「・・・ドコゾノ幼馴染ミタク、筋肉デデキテマセンノデ。」
背後に龍と獅子が見える。
店の主人は脅えつつ嵐の過ぎ去るのを必死で待った。
「これってにですか?」
「お詫びもこめてに貢げば?・・・?ヤダ?もしかしてグリ江ちゃんに貢ぎたかったの?!
早く言ってくださればよかったのに!!」
「・・・・。」
「何?」
複雑な表情。心中が手に取るようにわかるのもどうかと思いつつ。
「・・・罠なら、後から用意してるから安心して選びなさい!」
「ソレが安心できないんじゃないですか?!」
****
町についたものの、渦中の2人が何処にいるかわからず、適当に歩いて廻る。
途中、が目に付いた店に入ってみたりして、さて何処にいるのやら。
「あ、ちょっとおば・否、オネェサン。この辺で無駄に爽やかに笑顔を振りまきながら
背後に龍とか獅子とか飛ばしてる2人連れ見なかった?」
天性の愛想の良さをフル活用で尋ねるヨザックの横で、雑貨屋の窓から中を覗く。
「あ。」
思わず零れた声は、思ったよりも大きくて慌てて口を押さえ、隠れる。
「姫?いた?」
「うん。・・・あれ?」
「?」
「、いない?」
「うっそマジで?」
の言葉に慌てて窓の中を覗くと、確かに其処にいたのはコンラッドだけでの姿が見えない。
「〜っ何やってんだ隊長は!」
2人して店の入口に回ると丁度コンラッドが出てきた。
「「コンラッド!」」
「!?どうしたんです?」
「ちょっとーグリ江は無視?しつれーしちゃうー。そんな事よりは?!」
「と一緒じゃなかったの?」
「なら、・・・先に外で待ってると、?!いないのか?!」
「・・隊長、姫任せる。」
「ああ、すまん」
言うが早いか走り出す背中を見送り、隣に立つコンラッドの袖を掴む。
「探さなきゃ!」
「大丈夫ですよ。行き先はわかってますから。」
心配そうなを安心させるようににっこりと笑い、袖を掴んだ手を取って歩き出す。
「ちょっ?コンラッド?!」
「なら本当に心配いりませんよ。ギーゼラと一緒です。」
「ギーゼラと?!よかった・・・!じゃ、ヨザックには・・・?」
「ヨザックには少し心配させときましょう。それより俺はとデートしたいんですが、
・・・やっぱり不謹慎ですか?」
「不謹慎デスネ。」
「・・・。。」
「・・・でも、あたしもコンラッドとデートしたい、かな」
その言葉にあんまり幸せそうに笑うから、こっちも嬉しくなって、
繋いだ手を大きく振って歩き出す。
ヨザックがを早く見つけてくれるよう祈りながら、心の中でに謝った。
***
姿を見つけた瞬間、体が動いていた。
姿を見つけて安堵したのは言うまでも無いが、少し・と言うか割と怒っていたのも事実で
だから、半ば強引に引き寄せた腕に力が篭ってしまった。
掴まれた腕の痛みに顔を顰めた瞬間、引き寄せられて、気がつけば腕の中に閉じ込められた。
抗議の為に口を開こうとしたが、押し付けられた胸の鼓動が普段より早くて、
・・・不覚にも抗議の言葉を飲み込んでしまった。
「何をされているんですか?!」
不意に引き剥がされ、次の瞬間かけられたあからさまな敬語に、ムカついた。
「陛下といい、猊下といい、姫も、貴方も!ご自分の立場をわきまえて」
「黙って守られてろって言いたい訳?!」
「何をどー聞いたらそういう見解になるのかが聞きたいね。」
(―違う。)
(―そうじゃなくて。)
お互い睨んだまま、硬直状態。均衡を破ったのは落ち着きのある冷静な一言。
「2人とも?せめて道を開けなさい。皆さん困ってますよ?」
「あ、ごめんなさいギーゼラ。」
「軍曹殿?!と一緒だったのか?!」
「ええ、ウェラー卿にはお会いしなかったの?とこの店に買い物に来てるのは知ってるはずだけど?」
「・・・あの野郎。。」
謀られたと気づき脱力してその場に座り込む。気づけなかった自分に腹が立つ。
「じゃ、ヨザックも来た事ですし。これで失礼しますわね?」
「うん。付き合って下さりアリガトウゴザイマシタ。」
「どういたしましてv上手くいくよう祈ってるわ?」
「まかせてvしっかり嵌めて見せるわ・・・☆」
「残念、見たかったわー★」
「またいつでもチャンスあるし?」
「そうね♪じゃあヨザック?の事お願いしますね?」
「あ?ああ。」
座り込んだヨザックはそのままに、何か不穏な話をしつつギーゼラと別れた。
沈黙。明後日を見つつ、「あー。。」とも「えー、、」ともつかない言葉を並べる。
「・・・、」
決心して話しかけようと声をかけた途端
覗き込むようにして額に触れられた。
「ごめんなさい。」
「・・・・・・・・ハイ?」
「―お腹すいた。何か食べたい。」
言うなり歩き出す背中を慌て追う。すぐ振り返られ、伸ばされた手。
「エスコートしてくださる?」
「・・・光栄でゴザイマス。」
伸ばされた左手をとって歩き出す。ギーゼラに協力してもらった企みも気になったが、
(どうせ被害に遭うのは、隊長だし。)
遅かれ早かれわかる事だ。それよりも
「・・・ゴメンね?」
「・・・謝る様な事したの?」
「ハードカバーの角で殴られて、追い出されるぐらいの事を。」
「あれじゃウェラー卿のこと言えないものねぇ。」
「うん。ゴメンナサイ。で、俺に言う事は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「何その嫌そうな顔!グリ江心配したのにっ!!」
「ウェラー卿ごときに騙されるのが悪いんじゃない?」
「・・・仰るとおりで。」
半ば諦めつつ、自嘲気味に笑う。・・・まぁまさか素直な気持ちやら謝罪が聞けるとも思ってなかったけど。
「驚いた。」
「は?」
「ヨザックが焦ってたから。」
だから、驚いたのだと呟く。誤魔化すように歩くスピードが早くなった。
「ソウデスカ。」
「ソウデスヨ?」
手を引かれる様に歩きながら、
(こんな事ぐらいで、・・・俺も安いね。)
空いた手で緩む口元を押さえた。
「素直じゃないねぇ」
「うるさい。」
****
「ただいまー」
「!」
城に着いた頃にはだいぶ日も落ちていた。友人の無事に安堵して駆け寄る。
「あれ?ギーゼラは?」
「町で別れた。用事あるのに無理言って付き合ってもらったから。」
「そっか、でも良かった。ヨザックがちゃんと見つけてくれて。」
「そりゃもちろーん♪愛の力よ★」
「野生の勘の間違いだろ?」
「・・・サン止めなさいよ?」
「・・・サンこそ、貴方の役目だと思うわ」
少し離れて責任転嫁しながらソファーに座る。
「そういえば、何買ったの?」
「んー?。。ハイ、ウェラー卿。忘れ物。」
「ああ、ありがとうございます。」
「せっかくにって選んだのに肝心の物忘れてどうするんですか。」
「あたしに?」
「ええ、気に入ってくれるといいんですが。」
「ウェラー卿が、ココロをこめて選んだそうよ。」
「・・・ありがと。開けてもいい?」
「もちろん。」
爽やかな笑みでの隣に座る。はにかみながら袋を開けるの手が、止まった。
そっと立ち上がりヨザックの隣に移動する、
不穏な空気を察し、隣に立つを見るヨザック。
「コンラッド。コレ。」
「?」
が袋から取り出したのは、ピンクのロリータベビードール。
エロかわいい通り越して、・・・きわどい。
「?!!?!」
「・・・・ヘ ン タ イ ☆」
「!!!!」
スバラシキ笑顔で、はっきり告げられ、硬直するコンラッド。
「あー、いい断末魔。」
「・・・・・ギーゼラと買いに行ったのってアレ?」
「何のコト?(いい笑顔)」
悪魔の微笑み。幼馴染に心からの同情した。
「やっぱりスキンシップ禁止!半径5M近寄るなー!!」
「誤解だ!」
立ち上がりを引きずるように部屋を出るを、硬直状態から抜け出し慌てて追いかけるコンラッド。
やれやれといった風に笑いながらヨザックも後を追う。
「もぉサイアク。」
「ほんとぉーまさかこんなに見事に引っ掛かると思ってなかったわー」
「やっぱり罠か!!」
「ハイ、こっちが本物。」
笑いながら走りつつ差し出された袋の中に入っていたのはレトロピンクのニットワンピースと白のボレロ。
コンラッドがどんな顔して選んでくれたのか考えただけで、嬉しいのと照れくさくて顔が緩みそうになる。
「仲直りしてこなくていいの?」
「・・・あーとで!」
たまには、焦らせてやる。それで追いつかれたら笑って、それから・・・
「せっかくだし着て見せたら?」
「・・・うん。」
「下にソレも着たらさぞ喜ぶでしょうねぇー。ヤダ、ウェラー卿に感謝されてしまうわ!」
「・・・面白がってるでしょ?」
「そんな事、あるに決まってるでしょ?」
「ヨザックの味方してやる!!」
「ゴメンナサイ。ヤメテクダサイ。」
中庭を突っ切って部屋に戻ろうとして、の髪に結ばれていたリボンが枝に引っ掛かり解ける
「アララ、何やってんの。」
「ゴメン」
枝に引っ掛かったリボンを取ろうと手を伸ばした、その時。
風が吹いた。
「「あ」」
そのまま風に流され噴水へと落ちるリボン。
が拾い上げようと水の中に手を伸ばした瞬間。
吸い込まれるように水面が動く。
「は?ウソデショ?!」
「ちょっ!??!」
慌てて引き上げようとしたごと水の中へダイブ。
吸い込まれる瞬間に見えた姿は・・・
声を聞きつけ駆け寄ったコンラッドとヨザックの目の前には、何もなかったかのような水面。
噴水の傍に落ちていたのはワンピースの入った袋。
―2人の姿は、何処にもなかった。
―いつでも、伝えられると思ってた。
喧嘩も仲直りも、その気になればいつだってできるって。
まさか、こんなにいきなり会えなくなるなんて。
思ってもいなかった。
←back next→