光
明け方近くに床に着き。目が覚めたら当然のごとく太陽は真上近くにあって。
このまま、二度寝に突入したい誘惑を振り切り、ベットから降り立つ。
覚醒しきってない体を引きずるように部屋に備え付けのバスルームへ向かいながら、ふと、
ドアの下に何かが落ちているのが見えた。
「・・・・・?」
何か嫌な予感がしたが、寝ぼけたままの頭では判断もつかず。足元の手紙を拾い上げる。
宛名と差出人を確認。
予感的中。見なかったことにして捨ててしまおうか・・・・。
**
「おはよう陛下。」
「おはよう。もう昼だけどな。また遅かったのか?」
「んー。・・・・猊下が寝せてくれなくて?」
「!?」
「誤解を招く発言は控えてくれるかな?。」
「おはよう猊下。清々しい朝ね。」
「清々しいのは君だけだろ。昨日の夜のことは忘れないよ・・・。」
「お前ら・・・?」
「?どうしたの陛下?変な顔。」
ガシャン。
後ろの方で音がして振り返るとそこにいたのはニューヴァージョンのメイド姿なお庭番。
「げ、」
「げ?」
「猊下の浮気ものー!!あたしという者がありながらっ!!体だけが目当てだったのね!!不潔よー!!」
「そっちかよ!!」
魔王様の貴重なつっこみををうけ乙女走りで部屋から出て行くお庭番を見送り
何事もなかったかのように食事の席に着いた。
「いいのか?アレ。」
「猊下ったら。ヲトメの純情もてあそんじゃダメじゃない。」
「えー、だって僕は罪作りな男だから☆」
「・・・心底グリ江ちゃんが気の毒になってきた。」
「陛下が何を心配なさってるかは知りませんけど、昨日は奴も一緒にいたわよ?仕事もしてたし?」
「そうなのか?」
「一応、僕の護衛だからね、彼は。」
優雅に運ばれてきた紅茶を飲みつつ答える猊下。
陛下が頭を抱えるのを面白く見守りつつ、欠伸を噛み殺した。
「で、今度は何のゲーム?」
「バックギャモンとチェスだっけ?」
「カードは引き分けだったっけ?」
「夜更かしはお肌の敵なのにーダメじゃん。」
***
笑いながら部屋に入って来たのは親友ので、いつもと何かが違うと思ったら、
普段の私服じゃあまり見ないワンピース姿。
「サンかーわーいーいー美脚ー。」
「おおー似合うー♪」
「ありがとvグリ江ちゃんお手製なのー♪・・・・ところで、ねぇ?」
「・・・わー嫌な予感。」
「妙にサイズがピッタリなんだけど?」
「聞かないでってば。」
「サイズ教えた覚えは無いのよ!?」
「それはそれは。」
振り返ればそこにいたのは爽やかな微笑をたたえたウェラー卿コンラート。
彼を纏うオーラは、黒かった。
「何処で、のサイズを手に入れたんでしょうね??」
「あら、嫌だウェラー卿。ワタクシを疑ってらっしゃる?第一、ワタクシの詳しいサイズ知らないわよ?」
「と言う事は。」
「お庭番はヘンタイって事で。」
「って事で、じゃ無いでしょ?!コンラッドも!剣持ってかないの!!」
最愛の恋人に咎められて、渋々剣をしまうコンラッド。
お庭番がここにいなくて良かったと思ったのは陛下だけだった。
「で?ウェラー卿からは何貰ったの?」
「?」
「まだ貰ってないよ?」
「??」
「あら、意外ー。絶対朝一で無駄に凝った演出とかしてそうなのにー。」
「???」
会話についていけなかったのか。不穏な空気を察してか、コンラッドが口を開く。
「何のことですか?」
間。
「そうか、ホワイトデーって日本だけだっけ?」
「じゃあ何でグリ江ちゃんは知ってる訳?」
「あたしが教えたーステキ3倍返しの日だってv」
「ウェラー卿とあろうものが、知らないとはねぇ。」
「その辺抜かりなさそうなのにねぇ。」
「あの、」
「ああ、気にしなくていいよウェラー卿。知らなかったんだから仕方が無いさ、
ハイ、。ホワイトデーのお返しv」
「ありがとームラケン!綺麗ーかわいいーミニバラ?」
「二番煎じで悪いけど。」
「かわいいー!ユーリもありがとねv気を使わなくてよかったのにー。」
「女の子に贈るって言ったって花しか浮ばなくてさ。」
和やかな雰囲気の中、1人状況のつかめないコンラッド。後ろから不吉な会話が聞こえる。
「知らなかったんだから、仕方ないけど、やっぱりねぇー?」
「見返り期待してた訳じゃないけど、ウェラー卿とあろう人がねぇー?」
嫌な予感は外れない自信があった。この悪魔2人が絡めば尚のこと。
「!?ユーリ?!」
「落ち着けってコンラッド。嵌められたんだよきっと。3月14日はホワイトデーって言って、」
「彼氏がいる女の子が浮気してもいい日ー。」
「!!?」
「しません!嘘教えないでよ!ムラケン!!」
「2月14日のバレンタインデーのお返しに、『友達ならば3倍・好きな人には5倍』のプレゼントを
贈る日って言うか、女の子がプレゼントを要求できる日。で、早速ですがワタクシ「命令権」がいいでーす♪」
「いいでーす!じゃなくて!あんなチョコレートと呼べる代物じゃないもので見返りを要求するつもりですか?!
大体何でそんな大事な日をっ?」
「そんな簡単に、」
「教える訳」
「「無いじゃない?」」
「!!?」
と陛下は笑いながら呟く。
「あいつら、仲いいなぁ。」
「イキイキしてるよね。」
どこかスイッチが入ったウェラー卿がを連れて走り去るまで悪魔2人の笑いは続いていた。
****
「普通に教えてやれよ。コンラッドはともかく、が巻き込まれたら気の毒じゃねーか。」
席に戻り、冷たくなった紅茶に口をつけると陛下からのお説教。
「うん。それは、反省してる」
「お昼のこの段階で教えてやるだけ感謝して欲しいぐらいだね、だいたい渋谷だって知ってて教えなかったじゃないか?」
「まぁな。ところでは?グリ江ちゃんから何貰ったんだ?」
「?貰って無いわよ?」
「「?!!」」
2杯目のお茶をいれようとした所で話しかけられ、手が止まる。何2人して、変な顔ー。
「何の心境の変化?!」
「熱でもあるのか?」
「・・・時々思うんだけど、ワタクシのことを多少誤解してらっしゃいませんかしら?」
「誤解だなんてとんでもない。ありのままの君でいいと思うな。」
「あのねぇいくらワタクシでも罠チョコしか食わせて無いのに、お返し要求するなんてそんなことっ」
「するんだろ?」
「うん。」
「・・・・。」
迷いもなく、即答で答える。何か問題でも?ああ、そんなことより。
「見物に行かないとね♪」
「そうだった!こんな所でまったりしてる場合じゃないぞ何やってるんだい渋谷!ホラ早く!」
「・・・お前ら、本当に仲いいよな。。」
なんだかんだいって止めようとしない貴方様も結構ひどいと思うけど?
立ち上がりポケットに手を入れるとカサリと紙の音がした。
ああ、この存在忘れてた。まぁ、いいか。まだ時間はあるし。
*****
コンラッドと訪れたのは、城下の大通りを1本入ったところにあった小さなお店。
ノーカンティから降りて店の中にはいると、小さいながらも品のいい細工物やアンティークな指輪などが出迎えてくれた。
「きれー・・・。」
知らず出ていた呟きを聞き逃さなかったコンラッドが横で少し笑う。
「の欲しいものを選んで?」
そう言ってにっこり笑う。選んでって言われても、
「どれも可愛いいし、悩むよ・・・。あ、コンラッドが選んで!あたしに似合うもの!その方が嬉しい!」
我ながらいい考え。どれを選んでくれるのか楽しみで、困った顔してショーウインドウを覗き込むコンラッドが
可愛くてつい頬が緩んでしまう。
コンラッドの困った顔に見かねたお店のお爺さんも笑い出す。
「責任重大だねぇ、色男」
「まったくだ。そこの、リングを見せてくれないかな?」
「おお、目が高いね。コレはとっておきだよ?」
そういって取り出されたのは桜色の小さな石の周りに細やかな銀細工を施したピンキーリング。
可愛くって思わず覗き込む。
「気に入った?」
どうして、こうもあたしの好みにピンポイントなんだか。悔しいけど、本当に気に入ってしまって頷く。
笑って、店のお爺さんに包んでくれるよう頼む。
包んでもらってる間に、ふと目に付いたのが、さっきコンラッドが選んでくれたピンキーリングと
同じ銀細工が施された、シンプルなリング。目を奪われていると、包み終わったお爺さんが声をかけてきた。
「こっちは、彼氏にどうだい?さっきのリングを作った職人が同じ時期に作ったものだよ。
同じ銀細工のリングでお揃いでつけて恋人との絆も深まるってもんだよ?」
商売上手だなぁと笑ってるとコンラッドも笑って「じゃあそれも。」と言って、結局ペアリングになってしまった。
店を出て、ノーカンティに乗って。城とは違う方向に進む。
「何処行くの?」
「ヒミツです。それと、嫌な予感がするので。逃げます。」
「ああ。」
外れないそうにないものね、って言うかたぶん逃げても無駄なんだろうけど
コレは思っただけで、口には出さない。さて、それでは邪魔が入るまで2人でゆっくりしようか。
******
ノーカンティに乗って辿り着いた所は、丁度城と対面する小高い丘の上。
街中よりも高い位置にあるので、少し強めの風が吹く。風からかばうように後ろから抱きしめられて
どちらからともなく笑みがこぼれる。
目の前で、さっきの包みが開かれて、桜色の石が太陽の光に反射して光る。
コンラッドに左手をとられてリングをはめてもらう。あつらえたみたいにぴったり左手の小指にはまったそれを
太陽にかざすように上げると、銀細工がキラキラ光った。
「コンラッドのは?」
「がはめてくれる?」
そういってすっごく嬉しそうに微笑んでいて、こっちが照れる。
包みを開けて、コンラッドの左手の親指にはめる。
「何か、照れるね・・・。」
「ありがとう、。」
「お礼言うのはあたしでしょ?ありがとうコンラッド!すごく嬉しい」
「本当はこっちを贈りたかったんですけどね。」
そう言って、丁度左手の薬指元に口付けられる。
「俺の為に空けといてくださいね?」
嬉しくて、ちょっと泣きそうで、ずるいなコンラッド。
顔が赤くなるのがわかって顔を伏せたら指輪のはまった左手で顎を軽く持ち上げられて
そのまま、
「っーさーんっあっそびましょー?!」
・・・・ぶち壊しだよ。。
邪魔が入るとわかっていたとはいえ、あんまりのタイミングでコンラッドも肩を落としてる。
「いつからいたの?」
「最初から。」
「趣味悪い!!」
「絶妙なタイミング!流石ワタシ!!猊下なんてあまりの寒さに凍死寸前。・・・っていうか笑い堪えすぎて倒れてるんだけど。」
「きゃぁぁ!!隊長おっとこまえー!」
「コンラッドってタラシだったんだな!!」
「「褒めてないから」」
「お茶が入ったわよー?」とすっかりピクニックモードのグリ江ちゃんが呼んでいる。
・・・・ちょっとだけ残念だけど、仕方ない。左手のピンキーリングに免じて、今日は許してあげよ?
繋いだ手はそのままで。
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