今宵、貴方と夢の世界へ。

 アナタのすうぃーとはにーグリ江よりv

PS 西の窓開けといてね♪


***

何度見ても脱力感を覚える文章は変わらない。
ベットの脇に備え付けられたサイドテーブルに手紙を置いて、
開けっ放しの窓から入ってくる風に飛ばされないように本を重しにした。

とウェラー卿のイイトコロを我ながらスバラシイタイミングで邪魔して、
そのままフォンクライスト卿が半狂乱になって見つけてくるまでお茶会に興じ、
城に戻ってからは猊下の調べ物をちょっと手伝って、夕飯も食べた、お風呂も入った

「あと寝るだけなんですけど・・・・。」

誰に言う訳でもなく呟く。開けっ放しの窓からは夜風が舞い込み、流石にちょっと寒い。。
ベットに寝転び、ふと、左腕の時計を見る。
日付が変わるまであと、 2時間。

「何時に来るかぐらい書けっての。」
手紙の差出人に毒づき枕に顔をうずめる。ああ、睡魔が。誘惑が。
自慢じゃないが、寝つきはいい。寝起きは最悪通り越して極悪だけど。

うとうとしかけると、頭上で風を切る音がして、何かが部屋の中に・・・?!
「?!・・・鳩?」

普通、鳩は鳥目だから夜間飛行は出来ないだろう?眞魔国は違うのか?それとも飼い主に似たのか?
足にくくりつけられた手紙を取り、目を通す。
書かれていたのは地図。

***

「こんな時間に何処へ行く?」

呼び止められて、振り向くと眉間に皺のよったお兄ちゃんがいた。
「こんばんわ、フォンヴォルテール卿。いい月夜ね?」
「・・・曇ってるがな。」

いつもながら律儀にツッコミ入れてくるヒトだなぁ。苦労性だなぁなどと感心してると更に眉間に皺が1本増加

「何処に行くつもりだ?」
「ココ。」
目の前に地図を差し出すと、片眉が上がる。
「護衛は?」
「必要ないですよ?」
「お前は!・・・もユーリも猊下も自分の立場というものを」
「うん。ゴメンナサイ。でも大丈夫ですよ?今回は。」
「?」

訝しげな顔はそのままに、「じゃ!」と厩舎に向かって走り去る。
明日はお説教決定。

厩舎に到着。ノーカンティに挨拶し奥にいる赤毛の馬に近寄る。
「寝てたのに、ごめんね?」
迷惑そうに立ち上がる馬に声をかけながら城を出た。


***


地図の指し示すあたりに近づいてきたので馬から降りて、手ごろな木に手綱を結ぶ。
長兄お手製フードをかぶって、準備OK。地図を確認し迷いなく歩き出す。

角を曲がると、世界が一気に明るく染まる。
広場は大勢の人で埋め尽くされ、煌々と篝火が幾つも焚かれ、おもいおもいに酒や声が飛び交う。
そんな広場の入口に立って、目当ての人物を探そうと目を凝らすが見つけきれる訳もなく、
仕方ないので足を踏み入れる。と、横から声をかけられた。

「誰か、お探し?」
「ええ、まぁ。」

声をかけてきたのは、見事なまでの美脚を惜しげもなくスリットから魅せつけているオネーサン。
何処かで見たことがあるような?美脚に見惚れていると、後ろから今度は美胸のステキオネーサンが現れる
「あっらぁー?こんな時間に子供が1人でいちゃダメじゃない」
「誰探してるの?」
美人2人に挟まれ正直に答えたものやら、悩んでいると目の前に、現れた。

。」
名前を呼ばれて、何となく安心したなんて言わないけども。
とりあえずは苦情の1つでも言ってやろうと口を開きかけて、

「やっだー!ヨザックーじゃない!久しぶりー帰ってたのー?!」
「あー久しぶりー相変わらず美脚ねん♪うらやましいわぁー?」
「近頃、全然寄り付かなかったのは何処のどいつよ?イイヒトでもできたわけー?」

営業スマイル全開でオネーサン達と話しているヨザック。
・・・慣れてるなぁ。ぼーっと見ていると後ろから来た人にぶつかりちょっとバランスを崩す。

「あ、ごめんなさい。」
謝罪の言葉も届かずぶつかってきたマッチョの背中を見送る。
振り返るとヨザックがそこにいて、後ろではオネーサン達が笑っていて。

(・・・・・・・・・・。)

?」
気遣わしげに顔を覗き込み視線を合わせてくるヨザックに、わからないように息を吐く。

―いっそここまでくると清々しい。


「大丈夫。で?ここが夢の世界?」
「まさか。それでは参りましょうか?オヒメサマ?」
「オヒメサマは『』とか『グレタ』の総称であってワタクシのではなくってよ?そんなことよりも、」
「?」
「のどが渇いた。」
「・・・了解。ここ動くなよ?」

わかってる、と手を振って送り出す。背中を見送りつつ。さて、

「へぇ?随分とまぁ。今回はタイプの違う子選んだものねぇ」
「昔から面食いだったのは変わらないけどね。ふぅーん?」

挑戦的な、人を値踏みするような眼差し。実際値踏みされてるんだけど。
知らず口元に笑みを浮かべる。その表情が気に食わなかったのか、オネーサンたちが絡みつくように近づいてきた

「お嬢サマの手に負えるような男かしら、あの男?」
「あははは、ムリムリ。もって1週間って所じゃない?悪い事は言わないわぁ?悪いオトコに騙されたと思って早めに
 身を引いたほうが楽よぅ?それとも、満足させられるの?お嬢サマで?」

敵意むき出しの言葉、余裕を強調した態度が更に空々しい。香水の匂いがキツイな。どうでもいいけど、

「ねぇオネーサン方?」
「なぁに?」

明らかに勝ち誇った笑みを浮かべたオネーサンたちが瞬間凍りつく。

「ソレって、偽乳?」



「ぶっっ、わあははっはははははー!うひゃひゃひゃひゃははは!!」
いつの間に戻ってきたのか、手元のカップを落とさんばかりの勢いで笑い出すヨザックから
自分の分を受け取ってにこやかに別れのご挨拶。

「ご忠告感謝いたします。ごきげんよう?」

未だに笑い続けるヨザックを引きずりつつ歩き出した。

誰と勝負するか、はき違えてる奴らに興味は無い。


***

「あー、苦しい。」
「笑いすぎ。失礼ですよ?」
「貴女様が言いますか。」
「何か、問題でも?」
「いーえ、滅相も無い。・・・・ちょっとは妬いてくれてたりした?」
「やっぱり、ソッチ系なんだー。ごめんね気づいてあげれなくって!ワタクシのことはどうかお気になさらずに?!」
「ちょっと!なんで離れていくのよ!!ソッチ系って何の話?!」
「?だって、あの人達、グリ江ちゃんのお仲間でしょ?」

綺麗に化けてたけど。

「それで、偽乳?」
「大きさはツェリ様並だったけど。天然には敵わないよね。で、ここが『夢の世界』?」
「・・・まさか♪どうぞ此方へ」
その手つきは止めとけと心底面白そうに笑うヨザックはそのままに先へ進む。
広場を通り抜けると、緩やかな階段になっていて、下りきった先にはちょっとしたステージがあった。
すでに階段状の客席には何人かの人がステージが始まるのを待っていた。

「何が、」
始まるの?と問いかけて、突然の大音響に意識ごとステージに持っていかれた。

そして始まったステージに意識の全てを持っていかれる。この世界にマイクなんてなかったはず
なのにこんなに声が届くものなのかと食い入るようにステージに引き込まれるかのように聞き入る。
そんな様子をみて隣で笑いをこらえているようだったが、それさえも気にならない。

全てのステージが終わる頃には気がついたら拍手していた。

「気に入った?」
「上々!!」
歌はもちろん、踊りも音楽も全て好み!!興奮して見上げるとステージ上の歌姫から微笑みかけられる。
「きゃー美人さん!好み!!細い!触りたい!!」
「・・・・さん?コメントが親父っぽいから。」

ヨザックのツッコミは無視。舞台袖に下がる歌姫に拍手を送り、客席に座り込む。
「満足ー。良いもの見ましたv」
「なかなか見られるものじゃないからねぇ、気に入って頂けたようで何より♪」
「グリ江ちゃんは?お気に召しませんでしたのこと?」
「んー?楽しそうな見るのに夢中で、あんまり舞台見てなかったから。」
「今すぐ出演者その他スタッフの皆様に謝ってこい。」

ひどーいっ!などと叫ぶヨザックは再度無視。舞台の余韻に浸ってると、右肩に頭がふってきた
「重い。」
「容赦ねぇなぁ。」
くすくすと笑う頭をどうにかして押しやろうとも考えたが、・・・無駄なので止めた。

「・・・ありがとうございました。」
「どういたしましてv」
「てっきり罠だと思ったんだけどなぁ。」
「何気に失礼ね。どこぞのじゃあるまいし。」
「ホントにねぇ、罠チョコしかあげなかったから、見返り要求なんてそんなことするつもりなかったのにー」
「白々しいっ!恐ろしい子!!」

右肩の重さがなくなり、隣を向くと綺麗な青を細めて笑うヨザック。
顔が近づき、

「ヨザック。」
「んー?」
「向かって左手、3・2・1」

勢いよく振り向けば、そこにいたのはとウェラー卿。
なぁに?その、「惜しかった!」って顔は。

「たーいちょぉぉぉおー。」
半眼で不満顔なヨザック。
「自分達だけうまくいくと思ったら大間違いだ。」
「根に持ってやがる!親友の幸せの一時を邪魔した訳?!姫!ダメよこんな心の狭い男と付き合っちゃ!!」
、気づいてたのー?つまんなーい」
「バレバレ。だから護衛も断ったし。さぁて、サン陛下達のお土産買って帰ろうか♪」

幼馴染で繰り広げられる低レベルな争いはそのまま放置。
良いもの見たし、今日はゆっくり眠れそう。

ああ、そういえばウェラー卿に見返り要求するの忘れてた。・・・コレでしばらく遊べそう。

、企んでる顔になってるから。悪代官っぽいから。」
「・・・金のお菓子は魅惑的。」

明日が晴れだといいな。







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