「・・・サイ君。」
「・・・何?姉さん。」
「1日の始まりに、バランスの取れた朝食は不可欠だと思うのよ。」
「まったくもってその通りだと思うし、それに関しての異論は無いよ、姉さん。」
「卵は栄養価も高いし、美味しいし、ゆで卵にしてお弁当に入ってると私はすごく嬉しいんだけど、
サイ君もゆで卵好きよね?」
「ゆで卵は好きだよ。ゆで卵は。でもね姉さん。」
「なぁに?」
「コレは、百歩譲って、身内の贔屓目を除いても、ゆで卵ではない、それどころか」
「ぅぐっ」
「・・・・原型すらとどめていない。」
「ぐぐ」
―清々しい朝のはじまりは、爆発音と共に。
「朝からの豪快な爆発音はアレかぁ。」
「イマドキ、レンジでゆで卵なんて実験、小学校でもやらねーぞ?なんでゆで卵っていうか知ってる?」
「だって!!野菜もレンジで火が通る時代よ?!ゆで卵ぐらい出来たっていいじゃない!!」
「まぁいいじゃんマリューに怪我なかったわけだし♪」
「レンジは大怪我だけどな。」
「っ丁度変え時だったのよ!オーブンの調子が悪いってサイ言ってたものね!?今日買いに行こう♪ね?サイ君?」
たっぷりミルクで作ったカフェオレを飲んだ後、仏の笑顔で一言。
「(黙って)食べなさい。」
「「「ハイ」」」
途端に猛スピードで食べ始める家族を満足そうに眺め、外に目をやる。
(ああ今日もいい天気だ、洗濯ものがよく乾くだろうな)
明らかにこの辺の考えが主婦じみてきているのは本人も自覚しているので口には出さない。
口に出せば、途端に憐憫のまなざしと各々からのダメだしがもれなくついてくる。
「やっぱ怒ってんじゃん」
「そうかぁ?アイツはいつもあんな感じだろ?」
「ダメだわ、ついついディアッカのペースに・・・」
こそこそと喋る家族と台所の惨状はこの際無視と決め、カフェオレに手を伸ばした。
「朝から大変だったなぁ?サイ」
「おかげさまで。まだ行かなくていいんですか?義兄さん。」
「うわっ何かお前の口から『義兄さん』ってしんせーん!」
「(さっさと)いってらっしゃい。」
「今日は学校行ってから行くからまだいいんだよーっだ」
よーっだって、アンタ。つっこむと長くなりそうだからつっこまない。経験からくる確信。
「ディアッカは?準備できてる?」
「おー?ちゃんと靴下はいたか?」
「ガキか俺は。さっさとしろよオッサン」
「オッサンじゃない!」
「じゃあ私先に行くから!」
「「「いってらっしゃーい」」」
「サイ!ゴメンね!今日は早く帰るから!●スマ行こう!最新式のオーブンレンジ買いに行こう!」
「ハイハイ。ラップのいらないやつね。」
「そう!で、ゆで卵も作れるやつ♪ムゥ!ディアッカ!学校ではちゃんと挨拶して大人しくするのよ!」
(流石にそれは無理じゃないかなぁ。)
前者にも後者にも当てはまる感想は口には出さない。これも、長年の知恵とも慣れともいえる。
「さて、ディアッカ。ハンカチもった?」
「・・・お前、いいお母さんになれるぞ」
「もっていけ。ついでにティッシュと、絆創膏と緊急TELの番号はバックの横のポケットな、あとは、」
「サイ、大丈夫だって今日は挨拶だけだし俺も行くんだしー」
だから尚の事。とは思ってても言わない。正直に言う必要も無いし。
「ディアッカが使わなくても誰かが怪我してたらすぐ使えるだろ?一応テレカはバックの内ポケな。」
「サイってば心配性ー。」
「苦労性。」
「慎重派だと言って。ところで・・・義兄さん。」
「何?」
「新婚なんですから。行動には重々気をつけて。」
「・・・信用無いのね。」
「当然じゃん」
「お前に言われたか無い!サイお前もなぁ!
『俺はマリューを悲しませる真似は絶対にしない』ってオヤジさん達の墓前と、お前達の前で誓ったじゃん。」
「うん。だから気をつけて。」
「・・・はい。」
「ところでディアッカ」
「何?」
「・・・・。」
「何だよ。」
こいこい
「・・・・」
「・・・」
にこにこ
「・・・ぅ。」
「--------らしいから。がんばれよ。」
「そんなんじゃねぇぇぇ!!!っだぁっぁああ行ってきます!!」
「コラ待てディアッカ!〜〜あーもぉ行ってきます!」
「ムゥ兄さん印鑑ー」
「サンキュ!」
さて、天気もいいし、洗濯でもしますか。
back next
life is like a boat