life is like a boat

―サイ。おねぇちゃん。頑張るから。
―うん。でも、いいよ。無理しなくて。

両親が他界して早8年。
奇しくも姉が、最愛の家族を同時に2人亡くし、姉弟で・2人で生きていこうと決めた歳と、
同じ歳になった俺に、

家族が増えた。一気に2人も。

姉が結婚したいと紹介してきた人は、両親が健在の頃から隣に住んでいた、それこそ兄のように慕っていた人で
何の違和感もなく、寧ろ今更な感じはしたが心の底から祝福した。

そこまでだったら、よくある話で終わってたかもしれない。

よくある話と違っていた点は、義兄の家も相当複雑だった事。
義兄には義弟がいて、血のつながりはまったく無く、ただある日突然
「コイツ、俺の弟になるから。」
と紹介された。

その5年後、自分も違う形でその人の義弟になろうとは、その時はまだ考えてもいなかった。

(予想はしてたけどさ。)

天気は上々。気分もそこそこ。そして始まる緩やかでちょっとだけ騒がしい1日。



「さっさと起きろディアッカ。マリュー姉さん朝ごはん…液キャベ出してるから飲んじゃいな。
 ムウ兄さんアイロンかけてあるからコッチ着て。そっちは後でクリーニング出すからランドリー持って行って。」

「…サイお前、イイ嫁さんになるぞ。」

「何を今更。ハイ、ゴミ当番よろしく。ディアッカーいい加減準備しないと置いて行かれるぞ?」

「サイー、…ゼミの合宿って今日から?」

「そう。2泊3日ー、携帯電波入るから問題ないと思うけど、一応宿の連絡先は冷蔵庫に貼ってる。
 冷蔵庫の中にイロイロ作って入れてるから、後は温めるだけにしてあるから。昼は各自でどうにかするように。
 洗濯物は部屋に溜めないように、帰ったらまとめてやるからランドリーに出しといて?
 ポストの郵便物はこまめに回収するように、明日は不燃ゴミの日だから…えーとゴミ当番は、
 ディアッカちゃんと出しとけよ?あとはー…」

「…おかんかお前は。」

「留守中、しっかり頼むよ弟殿?」

留守中の一抹の不安はあるものの、「子供じゃないんだし?」ととりあえず自分を納得させる
他方面では一目をおかれているらしい、事実を知らないある意味幸せな人達の言うところの「理想の家族」の面々に
言うだけのことは言って、

「じゃ行って来ます。」

「おう。気をつけて。」

「着いたらメールしてね?」

「羽伸ばして来いよー?」

わざわざ玄関先まで見送らなくてもいいのに、と思いつつ、何となく嬉しいのは内緒にしておこうと思った。

「いってきます。」
「「「いってらっしゃい」」」

バタン。


「ホント、しっかり者ですこと。」

「イイオトコに育ってくれて、姉としては嬉しいんだけど、フクザツー。」

「しなくていい苦労までしてそうだよなー。誰かサンたちのおかげで。」

「ソレに自分が含まれているんだよな?」

「俺は別格だから?」

「身内の贔屓目除いてもイイオトコだと思うのよ?スキルも高いし。」

「ソレが原因じゃねーの?並みの嬢ちゃん達じゃ太刀打ちできねーだろ、あの主夫っぷり。」

「ああ?アイツ彼女いるぞ?」

「「?!」」

「しかも結構っていうか典型的なお嬢サマ。」

「ヤダ!ディアッカなんで知ってるの?!あたしでも知らないのにズルイ!!」

「ズルイって…。」

「写メないのか?使えねーなぁお前。」

「うるせー!いい加減自立しろダメ大人共!」


ぎゃあぎゃあと外まで響いてくる身内のくだらないやり取りを聞きながら、

(よし。お土産はナシ。ハイ、決定。)

気合と気分と共に、2泊3日分の荷物を持ち直した。



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