「シロコさんに決定しました。」
「・・・ひねりも何もねぇのな。」
「シロコさんオッドアイなのねーv美人さんだわーv」
「ネーミングセンス“0”?」
「肉球ピンクだーvそーぉれ猫パンチー」
「生意気言ってスミマセンデシタ。っていうかイタイイタイ爪たてんな!!」
―出会いから3時間経過。余命は、あと21時間。
時計を確かめ顔を上げる先で、「さてと、」と呟きながらバックを左肩にかけなおす。
視線に気づいたのか、シロコさんを抱え歩み寄り「はい」と渡す。
「ああ」とか意味の無い言葉でシロコさんを受け取ると
「じゃあね。」
そう告げ、迷いもなく歩き出した。
一瞬意味がわからず、我に返りシロコさんを抱えたまま慌てて止める
「ちょっと待て何処行く気だ?!」
「何処って、家に帰るにきまってんでしょ。」
何を今更といった顔で不思議そうに聞いてくる。
「否、だから」
「帰っちゃダメな理由でもあるの?」
「そうじゃない、〜〜〜っじゃなくて、さっき説明したとおりお前があと、
・・・21時間弱で、死ぬから、おれが、その、何だ?迎えに来たから、だから、」
「勝手な行動するなって事?」
「要約アリガトウ・・。。」
「じゃ、あんたも来る?」
「・・・・人の話聞いてるか?」
「聞いてるわよ。家に帰るのが勝手な行動だってんならしっかり見張ってりゃいいじゃない。
帰るわよあたしは。ついて来たけりゃご自由に?」
言いたい事は言ったとばかりにまた歩き出す。
またもや呆気にとられつつ背中を眺め、我に返って慌てて追いかける
「〜〜〜っクソっ!」
「なぁに?ホントについてくる訳?」
「自分がご自由にって言っておきながらナニその心底嫌そうな顔。」
「本音と建前って大切よね。」
「・・・・・。」
「まさか、家にも入るつもり?」
「仕事デスカラ。」
「彼氏ですらまともに部屋に上げたことなかったのに・・・・。年頃の娘を持つ親が見たら泣いて喜ぶかしら・・・?」
「いたんだ彼氏。」
「いたわよ。それなりに。ところで、・・・・何で『過去形』って知ってるのかしら?」
「仕事デスカラ。」
「・・・・あり得ないと思いつつ、すごく嫌な予感がするんだけど。」
「へぇー。何でしょう。」
笑顔で尋ねる先には、胡散臭い笑顔の貴公子。
「あたしが21時間後に死ぬ事と、コレまで付き合っていた人達とうまくいかなかった事って、関係ないわよね?」
「人のせいにするなんて、見苦しいぞ、まぁ仮にそうだったとしてもいいじゃん、
あんな奴らとうまくいかなくてもきっと良かったんだと思えよ」
「・・・・・つまり多少は関係あるのね?」
「・・・・。」
「黙秘は肯定とみなすわ。何?つまり?生まれるべきではない人間から更に間違いが起きないようにしてあったって事?」
「おおー、スルドイねぇ」
「へぇぇぇー・・・・・。」
互いに笑顔なのに目が笑っていない。
「まぁ今日まで生きてきたのだって、余命が24時間後って宣告したのだって、いわゆる『神のご慈悲』ってやつ?」
「ほぉぉぉ?人の恋路邪魔しといて?『神のご慈悲』?!笑わせんな!!」
人目も憚らず顔は笑顔のままで怒鳴る姿に、周りの人間が何事かと足を止める。
が、2人とも気にするわけもなく歩調はどんどん速くなる。
「・・・前言撤回。ついて来るな。」
「仕事だって言ったろ?、息上がってますよぉ?運動不足?」
「ああ、仕事。それはそれはタイヘンデスネェ。別にワタクシのペースに合わせて頂かなくても結構ですわよ?」
競歩並みのスピードで角を曲がる。走ってしまえばかえって楽になるかもしれなかったが、
いらない意地で歩くスピードを早くする。
次の角を曲がったら、速攻ダッシュで逃げようと心に誓い、
曲がろうとしたその時、
黒の高級外車が角から出てきた。
(っ?!やばっ!!)
轢かれると思った時には、背中にまた熱を感じ見上げる先には端正な顔。掴まれた両腕が痛かった。
「―誰かを巻き込む程落ちぶれちゃいないって?」
「・・・・ごめんなさい。」
素直な言葉に満足したのか掴まれていた両腕が自由となり熱が離れた。
熱が離れたのが、寂しい、と思ったのは、
そんなわけが無いと一瞬頭に浮かんだ考えを振り払うように頭を振る。
ふと、右手をとられた。
「え・・・?」
「さぁ帰りますか。」
「ちょっと!」
引っ張られるように歩き出し、繋いだ手に文句を言おうと更に口を開きかけると、
振り返り笑う
「いや?」
「・・・・イヤに決まってんでしょ。」
イヤだと言っているにも関らず、離そうとしない相手の左手と己の右手を眺め
少しだけ繋いだ右手に力をこめた。
ほんの少しだけ。
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鯨top
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