いつもの夢から目が覚めてた頃には日もだいぶ頂点に近づいていて、
自分以外の家族が出払ったリビングで
何気なくつけたTVの中にその姿を見て、
咄嗟にHDの録画ボタンを押せた自分に称賛を与えたかった
そういえば昨日予約録画してそのままだっけ、
先週から楽しみにしてたのよねあの番組
後から見ようと思ってたのにコレじゃあ肝心な部分消えちゃうよねぇ
あぁでも

「赤」だったんだなぁ。

ZAFTの中でもエリート中のエリート。トップガン。
優秀なのは認める。…おそらく優秀どころの騒ぎではないのだろうが。
どうしても、…何というか、そうは見えなかった訳でもないんだけど、
何で?と聞かれれば返答に困るけど、だって、ねぇ?

「アイツがねぇ…。。」

最初は「敵」で、次は「捕虜」、その次は「殺したい奴」で
次は  「仲間」だったんだろうか?

凛とした姿、その場の雰囲気まで変えてしまう絶対的な存在感。
一歩前を歩く銀糸と相反する金がお互いの存在を更に強調する。

見たことの 無い 顔。

「何この神妙な顔ー、笑えるー。カッコつけちゃって…」

ところで何で目の前が滲んでるのかしら?
水?雨漏りな訳ないし。
 泣いてるの?アタシが?なんで?

「おかしいな?アレ?ははっやだ何?…っ何でよ?!」

ワカラナイ

ワカラナイ

シラナイ

コンナ

コンナ

コンナヒトシラナイ


ダッテアイツハ

「コーディネーター」で「敵」で「捕虜」で「恩人」で「殺したい奴」で「死んでほしくないヒト」で


ヤサシイヒト



「っ何でよぉっ!」

届くはずの無い叫びと共に画面の中の彼の人の姿も消える。

どれぐらいそうしていたのかわからない。
また彼の人を映すのでは?と言った淡い期待は見事に打ち崩され
今はただ無意味に流れていくだけの画面を虚ろに眺めていた。

もう涙は出ていなかった。
あの時の激情が嘘のように晴れて、
頭の中が妙にクリアになった。

泣きたかったのかもしれない、
行き場を無理矢理失くす事で抑えていた感情を、
何かに・誰かにぶつけてしまいたかった。
そうして少し人を小馬鹿にした口調で
「まぁた泣いてんのぉ?」って
「やっぱお前ってバカァ?」って言われて、
いつものように怒って不貞腐れた自分を
「わけわかんねぇ何でオレが」とか
ブツブツいいながら宥めて、

時折見せる優しい顔を見たかった。

思えば全てが唐突、傍若無人で、軽薄で、何考えてるか全然読めない上に、
人を食ったような態度でいちいち突っかかってきて、
人の神経逆撫でするのが特技の癖に、周りに遠慮ってモン知らないくせに、
人の体調やら機微には敏感で、
困ったように眉根を寄せながら心配してくるもんだから、
おかしくって笑ったら頭小突いてきて、それが原因でまた喧嘩になったり、
大体普通女の子に手を上げるなんてサイテー、痛くも何とも無かったけど。
でも耳まで真っ赤になってて、アレは照れてたんだろうなとか本気で心配してたんだろうなとか思ったから
小声で、本っ当に、言った本人でさえ聞き取れるか聞き取れないかわからないぐらいの声で
「…ゴメン」って謝ったのを、しっかり聞き逃さない辺りがなんかムカツク。
しかもしっかり「ワカレバヨロシイ」とかエラそーにする所がまた尚の事、腹が立つ。

「……何かムカツク」

馬鹿馬鹿しいと思いつつ回想は止まらない

「大体いつも人の事見下してる割に、常識とか一切無いし、
コーディネーターだか何だか知らないけど、洗濯のやり方ぐらい知っててもいい筈よ!
軍人になる為の勉強するより先に自分の身の回りの事ぐらいできるようにするのが
学校の役目なんじゃないの?!あ、でも『オレってエリートだからんな事できなくてもいいの』とか言いそう!
うわーっ腹立つーもしくは『御曹司デスカラ』とか?」

着ていたパジャマをベットに投げつけクローゼットからお気に入りの
オレンジのワンピースを取り出す。

「第一、変に悟った感じで冷めてるって言うか大人ぶってる癖に、
人参とかピーマンとかセロリとか匂いのキツイ野菜が嫌いだったり、子供かっつーの
バレてないと思ってるんでしょうけど知ってるんだから!」

あらぬ方向を指差し睨みつけ、
着慣れたそれに手を通し、お気に入りの使い慣れたバックに財布と携帯etcをぶち込む

「しかもばれない様に噛まずに飲み込むのよ!あー消化に悪そう!!」

靴はだいぶ前に買ってそのまましまい込んでいたサンダルにしよう、
ヒールが高くて、履いたら彼の身長と変わらなくなるから
彼とのデートの時は履かなかったサンダル。ちょっとオトナっぽいピンヒール。
彼とのデートの時履いて行ったら拗ねたかな?
アイツが見たら、、馬鹿にされるわねきっと。
どちらにも見られる事もないのに何考えてるんだか、
頭の中で次々に繰り広げられる自問自答に軽く苦笑い。

こんな風に、思い出にしていくのだ。

彼も、

アイツも。


「コーヒーはブラック派のくせに紅茶にはいやって程、砂糖とミルク入れるしー」

お気に入りのワンピ・お気に入りのバック・おニューのサンダル。
公園の近くにおいしいパン屋さんができたって話してたっけ?天気もいいし公園で食べるのも悪くない。

「いつもいつも調子のイイ事いってなにが本心だかわかんないのよ!
冗談だと思ってたら急に真剣な顔するから心臓に悪いのよ!!」

サンダルをはいて、バックは持った。玄関の鏡でチェック。大丈夫、思ったよりも目は腫れていないし元気だ。

「しかも寝顔がカワイーって反則じゃないの!?」

カワイーなんて思ってしまう自分が腐れてる
ドアを勢いよく開けながら
そういえば今日は家に人がいなくてほんとーに良かったと頭の隅で思った。

頭の上から声がして、

「…寝顔って、誰の?」



バタン。

後ろでドアが閉まる音がした。



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